2024年12月2日
シンガポール労働市場の5つの変化
シンガポール労働省(MOM)は11月28日に発表した2024年の労働力調査で、労働時間の短縮や収入向上の進展が明らかになった。同調査はインフレ調整後の実質所得の回復や高齢化の影響を反映した内容となっている。
1. 労働時間の短縮
2024年、週48時間以上働くフルタイム労働者の割合は16.9%に低下。2014年の28.4%から大幅に減少している。
要因として、規則的な勤務形態への移行や過剰労働の減少、技術や柔軟な働き方による効率化が挙げられる。非専門職(Non-PMETs)の方が専門職(PMETs)よりも労働時間の減少幅が大きかったことも指摘されている。
2. 収入向上の機会増加
2021~2024年に5%以上の年収成長を享受した労働者は約60%と、パンデミック前(2016~2019年)の40%から増加。特に月収2,000Sドル以下の低所得者層では7割が5%以上の成長を達成し、その89%が2024年には次の収入帯に移行した。
高所得層でも同様の傾向が見られ、金融、保険、情報通信などの高生産性セクターで顕著でした。
3. プラットフォーム労働者の減少
プラットフォーム労働に従事する住民数は2023年の7万500人から2024年には6万7,600人に減少。主な要因は、タクシー運転手や配車ドライバーの減少があげられる。一方で、この形態の仕事を主とする人々の約9割がその働き方を好んで選んでいることも明らかになった。
4. 雇用不足率の横ばい
時間的雇用不足率は2024年も2.3%で安定。しかし、専門職や行政支援業務、芸術・娯楽業など一部の分野で微増が見られた。一方で、職探しを諦めた「落胆労働者」の数は前年の9,100人から7,400人に減少している。
5. 貿易依存セクターの失業率増加
情報通信および金融・保険業では、世界的な経済逆風による業務再編で失業率が上昇。情報通信業では5%、金融・保険業では3.8%に達した。
これらの動向は、シンガポールの労働市場が効率化と収入向上を進める一方で、高齢化や経済環境の変化に直面していることを示している。