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社会

2024年6月10日

女性の独身増加がシンガポールの少子化の要因に

 シンガポールの総出生率(TFR)が2023年に史上初めて1を下回り、0.97となった。これにより、女性の独身率の増加が少子化の一因であることが浮き彫りとなった。統計局(DOS)の分析によれば、2005年から2023年にかけてのTFRの低下は、既婚女性の割合の減少によるものという。
 
 この分析は、2023年のTFRが世界でも最低水準であることを受けて、5月に発表された。TFRとは、女性が生涯に産む子供の平均数を指す。国立大学(NUS)の医学部の教授、ジャン・ヨン氏は、「結婚適齢期の女性が減少し、婚外子が認められないシンガポールでは、結婚率の低下が続けば出生率も減少し続ける」と述べている。
 
 シンガポール政府は過去20年間、出生率を上げるために様々な施策を実施してきた。これには、ベビーボーナスや育児休暇の拡充、高齢女性向けの体外受精治療の政府補助金などが含まれるが、2005年から2023年の間に、20歳から34歳の既婚女性の割合が大幅に減少したことが、TFRの低下に大きく寄与した。
 
 特に、25歳から29歳の既婚女性の割合は2005年の52.1%から2023年の29.2%に減少した。これは、多くのシンガポール人が「理想の相手」を見つけられない場合、結婚しないことを選ぶためである。政策研究所(IPS)のマシュー・マシューズ博士は、「未婚者への偏見が急速に薄れ、結婚が必須の人生目標と見なされなくなってきた」と指摘する。
 
 また、IPSの調査によれば、21歳から34歳の女性は同年代の男性に比べて結婚や子育てに対する関心が低いことがわかっている。女性たちは主に、家事や育児の負担が自分に集中することを懸念している。
 
 専門家たちは、仕事と家庭の両立を支援し、夫の家庭での役割を増やすことで出生率の改善を図る必要があると述べている。例えば、父親の育児休暇を増やすことが推奨されている。シンガポールは、出産や子育てに対する政策を見直し、現代の育児に対応した支援を強化する必要がある。

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