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経済

2022年7月22日

政府系テマセクの運用資産、中国比率が22%に低下

 シンガポール政府系投資会社のテマセク・ホールディングスが中国投資の比率を引き下げた。総額4,030億Sドル(約40兆250億円)のポートフォリオ全体に占める割合は、2021年3月末の27%から22年3月末の22%に5ポイントも縮小させている。ただ割合はシンガポールの27%に次ぐ規模となっている。21世紀経済報道が7月21日付で伝えた。
 
 同社の投資テーマは、16年からデジタル化、SDGs(持続可能な開発目標)、新消費、長寿命化に据えている。足元のポートフォリオは、金融サービス、交通・産業、TMT(テクノロジー・メディア・通信)が最も多い。
 
 地域別の割合は、シンガポールと中国を含むアジアが全体の63%、米州が21%、欧州・中東・アフリカが12%などとなっている。
 
 特に中国では、新経済、新消費モデル、SDGs、革新的技術をテーマに絞った。最近では、倉庫・冷蔵物流の万緯物流(VXロジスティクス)、水素燃料電池(FC)開発の上海捷ケイ科技、デジタル販売支援の帷幄などに成長資金を与えている。
 
 6月27日には、抗体医薬を中心とする創薬企業の信達生物製薬に対する持ち株比率を8.99→9.03%に引き上げた実態が判明した。テマセクは15年に信達生物株を購入。信達生物は18年に香港上場した。
 
 今後の中国投資スタンスに関しても言及。比較的に慎重な姿勢を堅持しながらも、先行きが明るい事業分野の成長企業に投資するという方向性を示した。将来のすう勢として、デジタル化による産業グレードアップ、さらなる長寿命化を見越した生命科学や資産管理の分野、中国民族ブランドをはじめとする未来消費、新エネルギー・アグリテック・従来型産業のクリーン化改造を通じたSDGsをテーマとして追いかける考えという。未上場資産・企業向けの投資も積み増す戦略を打ち出した。
 
 一方、テマセクのチーフ投資ストラテジストは21年11月、中国ハイテク企業への投資を一時停止した実態を明らかにした。中国当局の監督強化を受け、先行き不透明感が増しているためという。当局の監督方針がより明確になれば、再び資金を振り向けることも考えるとした。医療技術、バイオテクノロジー、電気自動車(EV)、再生可能エネルギーなどの高成長分野に注目していると補足している。
 
 21年3月時点では、テマセクにとって中国は最大の投資先。主な資産は阿里巴巴集団HD(アリババ)傘下のマ蟻金融服務集団(アント・フィナンシャル)、騰訊HD(テンセント)、滴滴出行などとなっている。

 

(提供:亜州ビジネスASEAN

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