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日系企業・社会

2021年12月9日

在シンガポール日系企業の景況感が改善~スタートアップとの連携も視野に~

 ジェトロは2021年8月25日から9月24日まで、アジア・オセアニア地域の計20か国・地域に進出する日系企業を対象に、企業活動の実態を把握することを目的としたアンケート調査を実施した。本調査は1987年より実施し、今回で第35回目。結果は以下の通りだった。
 

調査方法:アンケート調査
実施時期:2021年8月25日~9月24日
調査対象企業:アジア・オセアニアの計20か国・地域に進出する日系企業
対象企業数:14,175社、有効回答数:4,635社〔回答率:32.7%〕
*在シンガポール進出日系企業の対象企業数:1,063社、有効回答数:475社〔回答率:44.7%〕

営業利益見通し(黒字企業比率)

 アジア大洋州の進出日系企業の黒字企業比率は63.0%と前年(48.9%)から回復した。新型コロナ禍からの経済活動の再開に伴い、現地市場や輸出による売上増加を通じたものとみられる。黒字企業比率は、インド、中国のほか、韓国、香港・マカオ、シンガポールでは2019年結果(新型コロナ前)を超えた。シンガポール進出企業の黒字企業比率は66.4%(前年比15.9ポイント上昇)、赤字は20.1%(同9.8ポイント下落)で、全体平均と比較すると回復の傾向が見られた。
 
 景況感を示す21年のDI値は全体平均で19.8に。過去最低だった20年調査(△40.7)よりプラスに転じた国・地域が多かった(シンガポールは28.4)。DI値がマイナスだった国のうち、ラオス、ベトナム、カンボジア、ミャンマーは、変異株など新型コロナの感染拡大などによる操業環境の悪化に伴う「稼働率の低下」等が、営業利益の見込みに影響を及ぼしたとみられる。
 

事業拡大意欲(今後、1-2年の事業展開の方向性)

 アジア・オセアニア地域では今後の事業展開で「拡大」と回答した企業の割合は43.6%と、20年調査(36.7%)から上昇した。国・地域別では、インド、バングラデシュ、パキスタン、ベトナム、台湾で5割以上だった。
 
 一方、「縮小」もしくは「第三国(地域)へ移転・撤退」と回答した企業の割合は5.6%と前年調査(9.1%)から減少した。「現状維持」とする企業は多くの国で5割を超えた。シンガポール進出企業は41.3%が「拡大」(前年比で11.3ポイント上昇)、55.5%が「現状維持」(同5.3%減)、3.2%が「縮小」もしくは「第三国(地域)へ移転・撤退」(同6.0%減)と回答。
 
 拡大する機能は「販売機能」が最多の59.7%、「生産機能(高付加価値品)」(32.6%)、「生産機能(汎用品)」(24.6%)が続く。シンガポールでは、「販売機能(69.1%)」に加え、「地域統括機能(19.9%)」「生産機能(高付加価値品)(16.2%)」「物流機能(14.1%)」が続いた。
 

通商環境の変化への対応進む、業績への影響「ない」企業が約半数に

 米中両国の対立の長期化が見込まれる中、通商環境の変化による業績への影響が「ない」と回答した企業は、20年調査より上昇し49.6%となった。シンガポールは52.9%。米中両国の対立の長期化が見込まれる中、進出日系企業では調達や販売先の変更など事業環境の変化への対応を既に進めている可能性がある。「全体としてマイナスの影響がある」との回答は中国が25.1%で最も多く、シンガポール(9.8%)は全体平均(14.6%)より低く、ASEANではベトナム(7.4%)に次ぐ低さだった。
 
 今後2~3年の業績への影響について「分からない」が39.0%で最多(シンガポールは39.5%)、「影響がない」が36.2%(シンガポールは38.2%)と続く。依然として先行き不透明とみる向きが強い。
 

経営上の課題

 シンガポール進出企業にとっての経営上の課題は、「従業員の賃金上昇」(54.1%)がトップだった。2020年にトップだった「新規顧客の開拓が進まない」は、45.0%(3.9ポイント低下)となり2番目だった。2020年は、新型コロナによる世界的な景気低迷が大きく影響したが、2021年は世界経済の回復がプラスの影響を与えている可能性が高い。3位の「競合相手の台頭(39.7%)」、4位の「日本人出向役職員(駐在員)への査証発給制限(34.9%)」はいずれも前年比で増加した。
 

脱炭素化に取り組む(予定含む)企業は6割超も、大企業と中小企業に差異

 脱炭素化(温室効果ガスの排出削減)について、すでに取り組んでいる企業が3割、取り組む予定の企業を含めると6 割に届くも、大企業と中小企業との取り組み状況に大きな格差があった。
 
 取り組む理由は「本社(親会社)からの指示・勧奨」が最多。シンガポールでは、同項目に加え「進出国・地域の中央・地方政府による規制や優遇措置(35.0%)」、「取引先(日系)からの指示・要望(21.4%)」「投資家からの要望(18.0%)」が主な理由。
 
 具体的な取り組みについて、「省エネ・省資源化」が60.7%で最多となり、2位以下を大きく引き離した。シンガポールでも「省エネ・省資源化(57.4%)」が最も多く、「環境に配慮した新製品の開発(33.2%)」、「再エネ・新エネ電力の調達(31.1%)」などが続いた。
 

イノベーション・デジタル

 アジア大洋州地域でデジタル関連技術を活用する・予定していると回答した企業割合は63.2%。国・地域別で、シンガポールは73.9%とASEAN域内でフィリピン(74.1%)に次ぐ高い水準。項目別では、電子商取引(EC)の活用割合が45.0%と、新型コロナ前の2019年(23.1%)から大きく上昇。
 
 シンガポール回答企業のうち、現地スタートアップとの連携について、「すでにしている(9.1%)」「予定がある(2.7%)」と高い比率を示した。有効回答数100社以上の対象国・地域ではインドに次ぐ高さ。
 
 シンガポール進出企業が現地スタートアップとの連携でターゲットとする国・地域はASEANが最も多かった。シンガポールはASEANを管轄するインキュベーション拠点として位置づけられていることが伺えた。
 


 
※本調査の詳しい結果はこちら
 

提供:ジェトロ・シンガポール

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