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政治

2021年10月21日

「安定化フェーズ」の延長、対象業種への継続支援について

 10月20日、シンガポール保健省(MOH)は、感染拡大を遅らせ医療を守るため、9月27日からの「安定化フェーズ」を11月21日まで延長すると発表した。措置については2週間後に見直しを行い、その時の状況に応じて調整するという。
 
 感染拡大を遅らせ医療への負荷を下げるため、シンガポールは9月27日から「安定化フェーズ」に入った。政府はこの4週間で、COVID-19 Treatment Facility(CTF)を拡充し、自宅療養プログラム(Home Recovery Programme (HRP))の改善に着手。また、軽症・無症状者が自宅で隔離・療養できるようにするため、療養の仕組についても簡素化した。ワクチン接種を受けておらずリスクの高い人を守っていくため、感染者の訪問頻度の高い場所へのワクチン接種別の措置(Vaccination-Differentiated Safe Management Measures (VDS))の拡大も行った。 
 
 安定化のためのこれらの措置により、シンガポールは感染拡大を緩めることができている。しかしながら新規感染者数は増加を続けており、ICUでの治療を必要とする危険な状態の患者が引き続き多く存在。状況のさらなる安定のための時間を確保するため、また、医療及び医療従事者を守るため、政府は現在の安全管理措置を維持する必要があると決定した。
 

COVID-19と医療の状況

 引き続き感染者の大多数(98.6%)は軽症か無症状で、これは84%という高い割合でシンガポール国民が2回のワクチン接種を完了している効果とみられる。この数日の重症者495人のうち、ワクチン非接種者は54.7%もの割合を占めている(残りは、ワクチン接種済みだが他の疾患を持っている人)。この数日、60歳以上でワクチンの接種を受けずに感染した人が増加しており、その数は1日100人程。ICUでの治療が必要なケースも、感染者数の増加と同じ割合で時間をおいて増加し続けており、過去2週間で80人となった(その前の2週間は46人)。
 
 感染者数の増加に伴って病院・療養施設に搬送されるケースも増加しており、現時点で感染者全体の約10%に当たる1,738人が、重症又は疾患を持っていて注視が必要なことから病院又はCTFに搬送されている状況だ。60歳以上の高齢者でワクチンの接種を完了していない人が、ICU搬送及び死亡例の3分の2を占めている。
 
 現在公立病院に1,650床の隔離病床と200床のICUが用意されているが、隔離病床の89%が占有されている状況だ。ICUの占有率は、コロナによりICUでの治療・モニターが必要な者とコロナ以外のICU使用者あわせて67%。
 
 感染者数の増加に対応するため、保健省は公立病院及び私立病院と協力してコロナ患者用病床の確保を図っている。現在病院とCTFで4,200床の病床があり、うちICUが200床、更に100床をICUが必要な患者に瞬時に対応できるよう備えられている。症状が安定している患者については、病院の負荷を下げるためにCTFに移送しつつモニターを継続。モニターの必要が低いと判断された場合は、Community Isolation Facility(CIF)に移送されるか、自宅療養(Home Recovery Programme)となる。それぞれの施設等間での緊密な連携によって搬送を効率化することで、病院入院者の数を抑えることが可能だという。高齢で疾患を持つコロナ患者の回復・リハビリ支援や療養体制の安定のため、保健省は複数のコミュニティホスピタルとCTF病床の増床について調整中である。
 
 このように公立病院において病床が増床されている最中だが、患者が入院できるまで、長い時間がかかっている。公立病院と医療スタッフへの負担を軽減するため、緊急度の低い治療や命に関わらない治療は先延ばしにされるという。また、治療体制の最適化のため、私立病院においても公立病院から患者を引き受けている。
 

対象業種への支援

 政府は「安定化フェーズ」の延長によって影響を受ける事業者や個人への継続支援を発表。影響の大きい業種へのJobs Support Schemeによる25%の給与補助(注:対象は国民と永住者)を継続する(詳細)。
 
 政府保有の商業施設のテナントのうち要件を満たす者については、半月分の家賃が免除される。民間商業施設のオーナーやテナントについても、Rental Support Schemeによる半月分の家賃補助が受けられる。国家環境庁(NEA)管轄施設における飲食店やマーケットのテナントも半月分の家賃免除の対象となる。
 
 タクシー及び個人ハイヤー事業者には支援策として、COVID-19 Driver Relief Fundにより11月及び12月に1日・1台当たりそれぞれ10Sドル及び5Sドルの支給が継続される。
 
 援策の総額は6億4,000万Sドルとなり、これは予想を上回った税収から拠出される。準備金の取り崩しはない。

 

提供:在シンガポール日本国大使館

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