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政治

2021年6月21日

フェーズ3に向けた最新アプローチ

 6月18日、シンガポール保健省(MOH)はコミュニティの安全を守るための再開措置の概要を下記の通り公表した。
 

最新の状況

 第一段階の緩和措置が開始されて以来、シンガポールでは小規模かつ継続的な感染経路が不明な感染例が発生しており、115 Bukit Merah View Market and Food Centre周辺での感染例のように、大きなクラスターへと拡大する可能性がある。さらなる感染拡大のリスクを低減し、このクラスターから発生する可能性のある新たな感染を防ぐために、関係省庁タスクフォース(MTF)はBukit Merah View 115,116で働くすべてのスタッフとテナントに対して特別な検査を実施し、これらの2つのブロックを感染者がいた日に訪れた一般市民に対しても新型コロナウイルス検査を無料で実施した。
 
 一般コミュニティと日常的に接触する職種の人々の健康を守るため、2021年3月からホーカーセンターや市場で働く人々は優先的にワクチン接種を受けられるようになっている。
 

フェーズ3への段階的再開に向けた最新アプローチ

 感知されない市中感染事例が引き続き発生しているため、シンガポール政府はフェーズ3再開に向けた計画を調整している。6月21日からは、飲食店での食事や屋内でのマスクを着用しないスポーツ/エクササイズなど、リスクの高い活動については、これまで発表していた5人までのグループではなく、2人までのグループでのみ再開が許可される。同時に、これらに従事するスタッフを、抗原迅速検査(ART)を始めとする定期的迅速簡易検査(FET)にできるだけ早く参加させる。今後数週間でFETの能力を高め、7月中旬頃までにはこれらの環境で働く人々に定期的FET体制を整える予定。スーパースプレッダー(多くの人への感染拡大の感染源)となるようなイベントや大規模なクラスターが発生しない限り、7月中旬(日付は後日発表)からは、このような活動を最大5人までのグループのサイズに拡大することが検討されている。
 

飲食店での店内飲食再開

 飲食店は6月21日より、2人までのグループで店内飲食を再開することができる。同一世帯ではない2人を超えるグループは、複数のテーブルに分かれていても、飲食店内で一緒に食事をすることはできない。また大声で会話をすることによる感染のリスクをさらに軽減するため、飲食店で録音された音楽を流すことは認められない。これは既に施行されている飲食店でのビデオやテレビの上映、生演奏の制限に追加されるものである。また飲食店では、感染のリスクを低減するために、グループ間の距離を1メートル以上離し、1グループ2人までにする必要がある。安全管理措置に違反した場合には、より厳しい取り締まりが行われる。飲食店の利用者は、飲食中を除いて、常にマスクを着用しなければならない。
 

結婚披露宴

 結婚披露宴は、出席者が長時間たくさんの人と交流をする傾向があり、よりリスクの高い活動であるため、7月中旬まで禁止される。
 

屋内でのマスク無しでのスポーツ/エクササイズ

 ジムやフィットネススタジオでは、屋内でのマスク無しでのスポーツ/エクササイズを、個人間では2メートル以上、グループ間では3メートル以上の安全な距離を置いた上で、2人までのグループおよびインストラクターを含む30人までのクラスで再開できる。マスク着用および屋外でのマスクなし活動については、5人以下のグループで、インストラクターを含めて30人以下のクラスで行うことが可能。詳細については今後SportSGから発表される。
 

在宅勤務はデフォルトに

 今後数週間のうちにフェーズ3(Heightened Alert)に移行するため、職場や公共交通機関などの公共の場での交流を減らすことで、感染リスクを抑制する必要がある。そのため在宅勤務は引き続きデフォルトとなる。事業者は、在宅勤務が継続されることを確認するとともに、職場に出勤する必要がある従業員については、始業時間をずらしたり、フレックスタイムを導入することが求められる。また、従業員が複数の職場にまたがって勤務することは今後も避けなければならない。職場の懇親会は引き続き認められず、仕事に関連したイベント(製品発表会、タウンホールミーティングなど)での飲食も引き続き禁止。
 

支援策の対象

 7月中旬まで、引き続き様々な活動の安全管理措置が強化されることから、シンガポール政府は影響を受ける部門に対するJobs Support Schemeの強化を2週間かけて10%に引き下げる予定であったが、その前に3週間延長することを決めた(詳細)。
 
 自営のホーカー業者への支援を行うために、政府はNEA(国家環境庁)またはNEAが任命した事業者が管理するホーカーセンターの出店者に対し、テーブル清掃および集中食器洗浄サービスの料金に対する補助金を7月中旬まで延長し、賃借料を免除するとした。
 
 安全管理措置の強化により引き続き影響を受けているその他の労働者を支援するため、政府はCOVID-19(一時的)回復助成金(CRG-T)を7月31日まで延長する。CRG-Tの既存の受給者で、引き続き支援を必要とする人は、7月にCRG-Tの2回目の支援を申請することができる。詳細は社会・家庭振興省から発表される予定。
 

高リスク活動に従事するスタッフに対する定期的迅速簡易検査(FET)の段階的な実施

 マスクをしていない顧客がいる環境で働く、あるいは個人間で長時間の接触がある場所で働くすべてのスタッフは、ART(抗原迅速検査)などの検査を用いた定期的なFET体制を敷くことが求められる。対象となるスタッフは以下。
 
 a.店内飲食のある飲食店
 b.パーソナルケアサービス(例:フェイシャル&ネイルサービス、スパ/サウナ、マッサージ店、理髪店、メイクアップサービス)
 c.客がマスクを外しているジムやフィットネススタジオ
 
 これらの施設のスタッフには、7月中旬頃から14日ごとのFETが義務化される。FETの大部分は、事業者の管理の下で行う自己スワブ検査により行うことができる。事業所がFETに取り組むことを支援するために、政府は企業が事業所内の管理者がスタッフのART自己スワブ検査を管理できるようにするためのトレーニングプログラムを用意。これらの管理者トレーニングプログラムは、今後3ヶ月間、無料で提供される。また検査のためのARTキットも準備される予定。一部の事業所はすでに従業員をトレーニングに派遣しており、6月21日から順次、定期検査を実施する準備が整えられている。
 
 自己スワブ検査の管理を行うことができない小規模な企業に配慮して、政府はクイック検査センター(QTC)を設置、検査が必要な人を支援するとした。 まずTekka と Yishunにそれぞれ1カ所ずつ設置し、2021年6月21日から運用を開始する。その後、QTCは順次増設される予定。またこれらの環境での感染リスクをさらに最小化するために、政府はこれらの環境で働く人への早期のワクチン接種を促進する。
 

高齢者介護施設の訪問者にART検査を導入

 6月5日から6月20日まで、高齢者の介護施設への訪問は、最近のコミュニティでの感染の事例を考慮して一時中断されていた。6月21日以降、物理的な訪問が再開される際、訪問者管理策を強化するために、高齢者介護施設への訪問者は事前にFETを受け、陰性と判定される必要がある。この事前のFETにはARTが使用される。施設によってはARTに必要な手続きを整えるのに時間がかかるため、訪問の再開が遅れることもある。その他、より多くの訪問者に対応する前に運営プロセスを安定させるために、少ない訪問者数で受け入れを開始する施設もある見通し。訪問者はARTを完了するために必要な時間を考慮した上で、高齢者介護施設での面会の予定を立てる必要がある。
 

SafeEntry Gateway チェックアウト・ボックスの導入

 今後数週間内に、接触者の追跡を容易にし、コミュニティでの感染拡大を抑えるための重要なデジタルツールであるTraceTogether(TT)プログラムとSafeEntry(SE)プログラムを強化するため、SafeEntry Gateway(SEGW)チェックアウト・ボックスが入場者の多い施設で順次展開される。「SEで施設の退出を登録したいが、現行のシステムではできない」というSEGW利用者からのフィードバックを受けて導入された。これにより正確に接触者追跡を行うことができる。
 
 SEGWチェックアウト・ボックスは、訪問者の多い施設(モール、病院、ポリクリニックなど)や、マスクを外した状態で個人が長時間接近する可能性が高い場所(飲食店やスポーツジムなど)に設置される。対象となる企業には通知が行き、今後数週間のうちにSEGWチェックアウト・ボックスが届く予定。
 
 一般市民は可能な限り、施設を出るときにSEチェックアウトを行うことが求められる。
 

感染の封じ込めの強化

 変異株の感染力が高くなっていることから、感染を封じ込め大規模なクラスターの発生を防ぐために、シンガポール政府はTTおよびSEのデータを利用していく。これにより、感染を防ぎつつ、より多くの活動を再開することができるようになる。この措置の一環として、感染者が訪問したのと同じ日にホットスポットを訪れ、ウイルスにさらされた可能性のある人たちにSMSで「ヘルスアラート」を送信。これらの人は指定された検査センターで検査を受ける義務があり、検査結果が出るまで隔離された状態で過ごすことが求められる。検査結果が陰性であれば、感染のリスクは低くなるが、念のため他人との接触を制限する必要がある。職場への出勤がどうしても必要な場合(在宅勤務ができない場合)は出勤を許可される。ただし職場における安全管理措置を厳守しなければならない。さらに、検査センターでは自己検査キットを配布。その後数日間、自宅で自分で検査を行い、感染していないことを確認しする必要がある。
 

mRNAワクチンによる心筋炎・心膜炎

 専門家委員会は、mRNA COVID-19ワクチンの2回目の接種が、若年男性における心筋炎および心膜炎のわずかなリスクと関連している可能性があるという国際的な報告を注視してきた。委員会は現在入手可能な国際的および地域的なデータを検討・評価し、mRNA COVID-19ワクチンを接種することのメリット、すなわちCOVID-19の感染や感染しても重篤な合併症が減少することは、引き続きワクチン接種のリスクを上回ると結論付けた。
 
 心筋炎と心膜炎は、それぞれ心臓の筋肉と心臓の外側の粘膜に影響を与える炎症性疾患である。女性に比べて男性に多い傾向がある。患者は胸の痛み、息切れ、心拍の異常などの症状を呈する。ほとんどの症例は軽度で、大きな介入を必要とせずに回復し、長期的な影響を受けることはないが、ごく稀に重度の症例では心筋に損傷を与えることがある。心筋炎および心膜炎は、心臓への血流が遮断されたときに起こる心臓発作とは別個の疾患である。
 
 mRNA COVID-19の2回目の接種後に心筋炎や心膜炎の発生が増加することが、海外(イスラエル、米国)で25歳以下の青年・若年層で確認されている。このリスクは米国におけるmRNAワクチンの10万回接種あたり1.6例と推定されており、これはシンガポールで観察されたアナフィラキシーのリスクに匹敵するもの。現在までのところ、ワクチンの初回投与後には心筋炎や心膜炎のリスクの増加は観察されていない。
 
 シンガポールでは、健康科学局(HSA)が18歳から30歳の若い男性による4件の症例を報告している。これは背景となる発生率に基づくと、この年齢層で予想される範囲の上限にあたる。 ほとんどの症例は2回目のワクチン接種後、数日以内に発症。 全員が回復したか、または退院している。
 
 さらなる研究や調査が行われているが、現在入手可能なデータでは、特に若い男性において、mRNAワクチンの2回目の接種後に心筋炎や心膜炎のリスクがごくわずかにある可能性が示唆されている。EC19Vでは予防措置として、ワクチンを接種した人、特に青年や若い男性は、2回目の接種後1週間は激しい運動を避けることを推奨している。この間、胸の痛み、息切れ、心拍の異常などが発生した場合は、速やかに医師の診察を受けること。
 
 新型コロナウイルスは世界的にもシンガポールでも引き続き健康上の脅威となっている。感染性亜種の出現は、長期的な慢性合併症を含む重篤なCOVID-19疾患や合併症のリスクだけでなく、広くコミュニティにCOVID-19を伝播させる可能性がある。EC19Vは、mRNAによるCOVID-19 ワクチン接種の利点は,既知および潜在的なリスクを引き続き上回っていると評価している。国内外で更なる分析が行われた際には、入手可能なデータのモニタリングを継続し、最新情報が提供される。
 

提供:在シンガポール日本大使館

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