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政治

2021年6月1日

シンガポールにおける感染状況及びワクチン接種状況(2021年5月下旬)

 5月31日、シンガポール保健省(MOH)は新型コロナウイルス感染状況及び、ワクチン接種プログラム進捗状況を下記の通り公表した。
 
 関係省庁タスクフォース(MTF)は地域の状況を注視。接触者追跡、検査、検疫を通じて地域社会での感染者の囲いこみを行っている。さらにフェーズ2(警戒の強化)の下で強化された対策を遵守した国民の努力と協力により、感染の連鎖を遅らせ、感染経路が不明な症例を抑制している。
 
 ワクチン接種の取組は引き続き順調に進行。新型コロナウイルス・ワクチンに関する専門委員会(EC19V)は、大規模な予防接種の実施後に国内外で収集された最新の科学的証拠を調査し、妊娠中および授乳中の女性、治療中のがん患者、重度の皮膚有害反応(SCAR)の既往歴のある人を対象とした予防接種ガイドラインを更新する予定だ。また保健省は、民間事業者による特別接種(SAR)によるワクチン供給を許可する見通し。
 
 接触者の追跡、検査、ワクチン接種は、引き続きパンデミックを抑制するための重要な戦略である。新型コロナウイルスでは家庭内感染の増加が確認されているため、対策を強化し、(感染者との接触により)隔離対象者の家族の自己隔離も開始。また追加のサーベイランス検査として、まずはドミトリー、建設現場、空港、一部の造船所の労働者を対象として抗原迅速検査(ART)を試験的に実施している。
 

最新の地域状況

 フェーズ2による対策の強化は5月16日に開始され、6月13日まで実施予定。公共交通機関の利用者数などのデータによると、日常の活動が大幅に減少していることが確認されている。 これにより感染の連鎖が緩やかになり、感染経路不明の症例が減少。また感染の連鎖を迅速に発見し、隔離し、囲い込むことが可能となった。
 
 MTFは、フェーズ2の下で行われている一連の対策は適切であると評価。これらの措置により、ほとんどの事業や日常活動を継続しつつ社会的な交流や感染のリスクを大幅に減少させることができたためである。MTFは引き続き状況を注視し、6月13日まで必要に応じて地域の状況や対策に関する最新情報を提供していく。
 

ワクチン接種プログラムに関する最新情報

 国内外にて多くの人々が予防接種を受ける中で、特に臨床試験データが十分ではなかった特定のグループに関連して、ワクチン使用の有効性と安全性に関するより多くのデータが得られた。EC19Vは世界中の証拠と動向を注視しており、以下のグループの人々に対するガイドラインを改訂した。
 

妊婦

 新型コロナウイルスが感染拡大している国で妊婦にワクチン接種が実施されている中、EC19Vは実際の世界の臨床データを検証。現在のところ、ファイザー・ビオンテックやモデルナのワクチンが妊婦やその胎児に害を及ぼす可能性を示唆するデータはない。しかし委員会は、妊婦に関して収集されたデータの量は、一般人口に関するデータと比較してまだはるかに少ないと認識している。妊婦はリスクとベネフィットについて医師と相談し、自ら十分な情報を得た上でワクチン接種を決定する必要があるとした。妊婦はワクチン接種を選択する場合、6月4日以降ワクチン接種の対象者となった時点で、登録してワクチン接種の予約をすることができる。
 

授乳中の女性

 EC19Vは、授乳中の女性がワクチンを接種することも安全とした。ファイザー・ビオンテックまたはモデルナワクチンを接種するために、授乳を中断する必要はない。
 

治療を受けているがん患者

 治療を受けているがん患者(化学療法、免疫療法、放射線療法を過去3ヵ月以内に受けた者、または今後2ヵ月以内に受ける予定の者を指す)は、新型コロナウイルスによる合併症のリスクが高い脆弱なグループである。現在のところ、このグループに対してmRNAワクチンによる危険性や有害事象の発生率の増加を示す証拠はない。そのためワクチンを接種することができるが、その際には主治医の専門医がワクチンの接種に適しているかどうかを評価した上で、病院内で接種する必要がある(ホルモン療法を受けているがん患者は、現行のガイドラインでは、接種可能な場所であれば引き続き接種することができる)。がん患者のワクチン接種に関するガイドラインは、民間専門医に相談している場合も含めてとりまとめ中であり、準備が整い次第、さらに情報提供される。
 

重度の皮膚有害反応(SCAR)のある者

 SCAR*の既往歴があり、これまで接種が禁忌とされていた人でも、ファイザー・ビオンテックまたはモデルナのワクチン接種は安全であると判断された。接種対象者となった際、予防接種センターで接種を進めることができる。
 
 ※重度の皮膚有害反応:Stevens-Johnson Syndrome, Toxic Epidermal Necrolysis, Drug Rash with Eosinophilia and Systemic Symptoms, Drug-induced Hypersensitivity Syndrome(薬剤性過敏症症候群)など。
 


 EC19Vは、より多くの人が安全にワクチンを接種できるように、アナフィラキシーの既往歴のある人の安全性データを見直している。委員会は今後2週間でこのレビューを完了させる予定であり、アナフィラキシーの既往歴者がmRNAワクチンを安全に接種できるようにするガイドラインを策定する。今後も他の種類のワクチンのデータを検討し、mRNAベースのワクチンの接種が推奨されていない人にも適した、安全で効果的なワクチンの導入を検討していく。
 

ワクチンの特別接種(SAR)

 MOHは、ファイザー・ビオンテックとモデルナの2つのmRNAワクチンを予防接種プログラムのために認可している。医学的にシンガポールで認可されている2つのワクチンを接種できない場合もあり、他国で使用されている他のワクチンの使用に関心が寄せられているが、シンガポールではそのようなワクチンの承認申請がなされていないか、または評価継続中である。
 
 EC19Vによる見直しにより、アナフィラキシーの既往歴のある人がファイザー・ビオンテックとモデルナのワクチンを接種できるようになることで、これらの懸念の一部は解消される。さらに柔軟性を持たせるために、MOHは特別接種(SAR)で他のワクチンを使用できるようにし、全体的な接種率の向上を図る。SARは、個別のニーズに対応するために未登録の医薬品を輸入・供給するための既存のプロセスで、これによって世界保健機関(WHO)が緊急使用リスト(EUL)に掲載することを承認したワクチンの供給にSARを使用することが認められる。このようなワクチンの使用は、WHOのEULによる指示や対象年齢に従ったものでなければならない。SARによる未登録のワクチンの使用は、このパンデミックの期間中に限られる。
 
 この方法は民間の医療機関で利用可能。SARの下で使用される他の医薬品と同様に、ワクチンを投与する医師と本人がHealth Sciences Authority(HSA)に登録または認可されていないワクチンを使用することのリスクとベネフィットについて話し合い、十分な情報を得た上で決定する必要がある。また本人は医師と話し合い、リスクに対するすべての責任を受け入れることを承知し、インフォームド・コンセント・フォームに署名することが求められる。本制度で接種されたワクチンに対して、シンガポール政府からの補助金は支出されない。本制度で接種した場合は、ワクチン接種のためのワクチン被害救済制度(VIFAP)の対象にはならない。より多くのデータが得られるようになれば、SARの下でワクチンを接種した人が、国のプログラムの下でワクチンを接種した人と同様の検査免除や公衆衛生上の制限の免除を受ける資格があるかどうかをMOHが検討できる可能性がある。
 

新しいグループへのワクチン接種の開始

 5月30日現在、ワクチンの接種回数は400万回を超えている。約230万人が少なくとも1回目の接種を受け、そのうち170万人以上が2回目の接種を経てワクチン接種を完了した。これまでのところ、45~59歳の対象者の72%、40~44歳の対象者の約60%が接種済み、または接種予約をしている。60歳以上の高齢者は約73%が接種を受けたか、接種予約をしている。
 
 シンガポール政府はワクチンの供給計画を確認しつつ、今後2ヶ月間でより多くの国民がワクチン接種を受けられるよう進めていく。まず6月1日から、学校や高等教育機関(IHL)の40万人以上の学生が段階的にワクチン接種を受けられるようにする。学校や高等教育機関の生徒へのワクチン接種は、教育機関や地域社会の安全を守るための国の大きな取り組みの一環。教育省(MOE)から別途詳細が伝えられる予定。
 
 このまま予定通りワクチンが確保できれば、6月中旬頃には残りとなる39歳以下の年齢層にもワクチン接種を行うことができる見通し。この年齢層は非常に多いため、対象者は接種予約が開始される2週間前に予約可能となる。
 

検疫対象者の家庭内接触者は自己隔離

 現在、感染が確認された者の濃厚接触者には検疫(隔離)命令が出され、政府の隔離施設または自宅(自宅が適切な場合)に、感染者に最後に接触した日から14日間隔離されている。これにより潜在的な感染者がコミュニティから隔離され、ウイルスの拡散が抑えられている。
 
 感染者と同じ世帯内での感染が増加していることが確認されているため、政府は感染者周辺の公衆衛生上の追加予防措置を講じる。隔離命令を受けた人については、家族全員についても本人の隔離開始時のPCR検査で陰性の結果が出るまで、あるいは本人の隔離が終了するまで、自宅で自己隔離し、社会的な交流を最小限にする必要がある。なお検査結果を待っている間に体調が悪くなった場合にも、速やかに医師の診察を受ける必要がある。
 

抗原迅速検査(ART)による積極検査の強化

 頻繁で広範囲な検査は、より多くの経済的・社会的活動を安全な形で継続することを可能にする、鍵となる重要な取り組みである。PCR検査の使用は、急性呼吸器感染症の症状のある患者や出入国関係の最前線の労働者の定期検査など、さまざまな状況で陽性者を検出するのに効果的で、引き続き感染症の臨床診断としては最適かつ効果的とされる。
 
 しかしPCR検査の結果は1日か2日かかることがあるため、現在ではARTのような新しい検査法を適切に使用することで既存の検査体制を補完することとなった。PCR検査に比べて感度は低いものの、安価で迅速かつ簡便に実施できるため、頻繁に使用する場合には実用的であり、非常に効果的な積極検査となる。これにより、より多くの人々に検査を拡大することができ、潜在的な感染を早期に発見し、さらなる感染拡大を防ぐための対策をより早く開始することができる。
 
 シンプルで簡単な検査をより頻繁に行うことで、感染状況が変化し続けていても、より安全に仕事や活動を続けることが可能となる。これまでに、イベントや結婚式でより多くの人が参加できるようにするための事前検査や、陸路でシンガポールに入国する貨物ドライバーの検査にARTを導入。今後はこのような検査を職場など、特に人との関わりが多く、多くの人と密接に接触するような環境での定期的な検査に利用することができる。また広範な検査を行うことで、より安心して大規模な集会を再開することも可能になる。さらに政府は店頭で販売されるARTキットの導入にも取り組んでおり、個人が自分で検査できるようになった。キットの入手方法については、準備が整い次第、詳細が発表される。
 
 手始めに、ドミトリー、建設現場、空港、一部の海上造船所の労働者を対象に、定期的なサーベイランスのためのARTの使用が試験的に開始された。これは従来から行われているPCR検査の定期検査(RRT)に加えて行われる。ARTで陽性と判定された人は、染確認するために、Swab and Send Home Public Health Preparedness Clinics (SASH PHPCs) またはRegional Screening Centres (RSCs) でPCR検査の結果を確認することとなる。ART検査で陽性と判定された場合、PCR検査で陰性と判定されるまで、自己隔離することが求められる。このような方法による検査は、 大学の学生寮での試験運用を皮切りに、より多くの環境で順次実施される予定。またシンガポール政府はCapitaLand社と協力して、いくつかのショッピングモールにて、入居者やそこで働く人々を対象に試験運用を実施する。すべての職場や雇用主は、スタッフや顧客の安全を守るために、このような代替テストを定期的に実施することが推奨される。
 

提供:在シンガポール日本大使館

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