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政治

2021年5月17日

シンガポールにおける感染防止措置まとめ(2021年5月中旬)

 5月14日、シンガポール保健省(MOH)は、新型コロナウイルスの感染防止措置を強化することを公表した。

 

シンガポールの感染状況(最新)

 この2週間で、ICA職員とその親族、Tan Tock Seng Hospital(TTSH)、Tuas South Community Care Facility、Pasir Panjang Terminal周辺で複数のクラスターの発生が確認された。最近では、チャンギ空港第3ターミナルに新たなクラスターが発生し、これまでに46件の感染者が確認されている。
 
 コミュニティで検出されていない症例からの感染拡大を防ぐために、シンガポール政府はコミュニティでの新たな感染が発生する可能性を検出、隔離、保護するために迅速な対策を講じている。TTSHの患者や訪問者など、感染期間中にTTSHなどでクラスターに巻き込まれた可能性のある人を対象に、積極的検査を実施。また、Pasir Panjang Terminaの港湾労働者や、チャンギ空港第1・第3ターミナル、ジュエル・チャンギの労働者を対象とした特別検査を実施した。
 
 5月1日からは、地域や職場での交流を最小限にとどめ、コミュニティへの感染の連鎖を断ち切るための追加の対策を実施している。これらの対策は5月8日よりさらに強化され、大規模なクラスタ-が発生する可能性を最小限に抑えるため、社交的な集まりや、大規模イベント・活動の規模が縮小された。
 
 しかし、感染経路不明の症例が相次いでいる。これはコミュニティ内に検出されていない症例が存在し、コミュニティ内での感染が続いている可能性を示唆しており、感染の連鎖を断ち切るための初期の対策や現在行われている対策が不十分である可能性が憂慮される。
 
 このようなリスクを抑制するために、関係省庁タスクフォース(MTF)は5月8日に導入した対策に続き、さらなる対策強化の必要があると決断。人が多く集まり、長時間マスクを外しているような、リスクの高い環境に的を絞った制限をかけることを発表した。
 
 以下の対策は、2021年5月16日(日)から2021年6月13日(日)まで実施される。
 

許容されるグループサイズのさらなる縮小

 現在5人まで許容されている社交的な集まりを2人までに、1世帯あたり1日5人の訪問者の上限は1世帯あたり1日2人に、さらに引き下げる。個人は他の世帯への訪問、友人や家族との公共の場での会合など、社交的な集まりの回数を1日2回までに制限する必要がある。
 
 現在の育児環境を継続するために、祖父母が日常的に世話をしている孫については、1世帯あたり2人までの訪問者数や1日の交流回数にはカウントされない。ただし、祖父母は自分自身と孫を新型コロナウイルスの感染から守るために、予防接種を受けることが強く推奨される。また感染のリスクを減らすために、祖父母は異なる世帯の孫同士の交わりを最小限にすることが求められる。
 

職場での交流を最小限に

 職場では在宅勤務が標準となる。事業者は、在宅勤務が可能な従業員には在宅勤務を保証しなければならない。引き続き、複数の職場への労働者の相互派遣は認められない。
 
 事業者は、職場に戻る必要のある従業員の始業時間をずらし、柔軟な労働時間を実施することが求められる。職場での懇親会は認められない。 従業員は職場で食事休憩をとることができるが、マスクを外した状態で同僚と交流することは控える。
 

屋内での「マスクオフ」活動の中止

 最近のクラスターでは、マスクオフの環境、家庭、飲食店などで高い発病率と2次感染が発生することが明らかになっている。地域社会での感染リスクを低減するため、この期間中は、飲食店での食事など、屋内での「マスクオフ」活動が禁止される。
 
 その他室内エクササイズや、個人・グループでの室内スポーツ・エクササイズ活動も禁止。マスクを外す必要のあるパーソナルサービス(フェイシャル、サウナなど)、歌、管楽器、金管楽器などの楽器の演奏も禁止される。なお、マスクを外して診察を受ける医療・歯科では、この制限は適用されない。
 

店内飲食(F&B)の中止

 店内飲食は客同士がマスクを外して長時間近接し食事をすることが多いため、よりリスクの高い環境である。コミュニティへの感染リスクを低減するため、屋内外を問わず、店内飲食店(ホーカーセンターやフードコートを含む)では、持ち帰りや配達のオプションのみ提供が認められる。
 

イベントの規模縮小とイベント前検査の必要性

 大規模なクラスターが発生する可能性を最小限に抑えるため、イベント規模をさらに縮小し、規模上限を引き下げる。イベントの参加者が安全にイベントを進行できるようにするためには、イベント前検査(PET)が引き続き重要な手段となる。(PETの詳細はこちら
 

礼拝などの集まり

 礼拝などの集まりは、PETを使用しない場合は一度に50人、PETを使用した場合は一度に100人が参加者の上限となる。エアロゾルによる感染のリスクをさらに軽減するために、宗教者をはじめとするすべての参加者は、常にマスクを着用しなければならない。またこの期間中は、歌や管楽器の演奏が禁止される。
 

ショッピングモール・ショールーム

 ショッピングモールやショールームの収容制限は、GFA(総床面積)1人当たり16平方メートルにさらに縮小される。人出の多いショッピングモールでの日曜日の奇数日、偶数日の入場制限は継続される。
 

アトラクション施設及びショー

 MTIの事前承認を受けたアトラクション施設は、稼働率が25%に引き下げられる。屋内および屋外のショーは、PET使用の場合は100人まで、PET使用なしの場合は50人までとなる。
 

美術館・公共の図書館

 収容上限を25%に削減して運営。
 

映画館

 PET使用の場合は100人まで、PET使用なしの場合は50人まで入場可能。一般的なグループ規模である2名が適用され、映画館内での飲食物の販売・消費は不可。
 

企業イベント・ライブパフォーマンス

 PET使用の場合は100人まで、PET使用なしの場合は50人まで入場可能。スピーカーや演奏者がマスクを外すことはできない。また、歌や管楽器や金管楽器などの楽器の演奏も不可。
 

結婚式

 飲食店に対する措置と同様結婚披露宴は認められない。PET使用の場合は参加者100名、PETなしの場合は50名まで可能。
 

葬儀

 埋葬・火葬参列者の上限は20人以下に制限される。参列者は、感染のリスクを減らすために安全な距離を保ち、常にマスクを着用することが求められる。
 

支援の拡充

 飲食店での店内飲食が禁止されたことを踏まえ、シンガポール政府は、店内飲食が禁止されている期間中に従業員に支払われる賃金総額のうち、最初の月額4,600Sドルの50%にJSS支援率を引き上げる。これは、2021年6月までに支払われた賃金に対する10%の支援からの引き上げである。
 
 また、自営業者でJSSの恩恵を受けないホーカーやコーヒーショップの出店者を支援するために、政府は政府機関のホーカーやコーヒーショップのテナントに対して1ヶ月間の賃料免除を行う。商業施設の家主はこの期間中、飲食店のテナントをサポートすることが求めらる。
 

フェイスシールドの使用について

 フェイスシールドはマスクの代わりに飛沫による感染を防ぐことはできないということが研究で証明されている。さらに重要なことは、フェイスシールドは着用者が感染している場合、飛沫の拡散を十分に防ぐことができないということである。したがってフェイスシールドは、医療上の例外や、12歳以下の子供がいる場合、新郎新婦が結婚の儀式を行う場合などを除き、マスクの代わりとして使用すべきでない。
 

戦略的検査の拡大

 上記の対策は、コミュニティ感染のコントロールのために、過去1年間に構築してきた検査、接触者追跡、ワクチン接種の体制や能力が加わることにより更に強化される。特に検査は、ウイルスに感染した人を迅速に特定し、さらなる感染拡大の可能性を減らすための重要な防御手段の一つである。積極的な検査、新型コロナウイルスへ感染リスクが高い人などの対象グループに対する定期的な検査、および急性呼吸器感染症(ARI)と診断された人に対するPCR検査により、コミュニティにおける感染経路不明な症例の迅速な発見が可能となった。
 
 さらに、可能性のある患者を迅速に発見するため、シンガポール政府はSASH、PHPC、ポリクリニック、救急部、RSCで、ARIの症状があるすべての人を対象に抗原迅速検査(ART)を開始する。このARTは、PCR検査と一緒に行われる。ARIの症状を持つすべての患者に対するART、PCR検査は政府が資金を提供する。
 
 ARTの精度はPCR検査に比べて低く、偽陽性や偽陰性が多くなるが、PCR検査に比べてARTは迅速な対応が可能であるため(検査登録してから結果を通知するまでの時間は、ART検査では通常約30分だが、PCR検査では最大48時間かかる)、ARTによって陽性と判定された人に対して、公衆衛生上の措置を迅速に講じることができる。
 
 この強化された検査体制は、5月15日より、すでにART提供者として認可されている約200のSASH、PHPCがスタート。5月中にポリクリニック、病院内の救急部、RSCやすべてのSASH、PHPCに拡大していく予定だ。また、TraceTogetherやSafeEntryプログラムなどのデジタルツールを利用することで、患者とその身近な接触者を迅速に特定することが出来るようになる。
 

弱者とコミュニティの安全を守るために

 ワクチン接種は、パンデミックとの闘いにおいて引き続き重要である。シンガポールにおけるワクチン接種は医療従事者や高齢者、新型コロナウイルスにさらされるリスクが高い人など、最も弱い立場にある人から始め、着実に進められている。5月13日の時点で、320万回以上のワクチンを接種。約190万人が少なくとも1回の接種を受けており、そのうち約130万人が2回目の接種を受け接種を完了している。
 
 今回の事例は、ワクチンを接種しても感染の危険性が完全になくなるわけではないことを示している。しかしワクチンを接種することで、感染を大幅に防ぐことができ、病気の重症度やその後の感染を減らすことが可能になる。ワクチン接種が重要な役割を果たしていることは言うまでもない。シンガポール政府は、社会活動の安全な再開について、ワクチン接種率が高いレベルに達して初めて実感できるものとしている。
 

提供:在シンガポール日本大使館

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