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経済

2020年12月24日

ジェトロ「2020年度 アジア・オセアニア海外進出日系企業実態調査」結果

 ジェトロは2020年8月24日から9月25日まで、アジア・オセアニア地域の計20か国・地域に進出する日系企業を対象に、企業活動の実態を把握することを目的としたアンケート調査を実施した。本調査は1987年より実施し、今回で第34回目。
 
 調査方法:アンケート調査
 実施時期:2020年8月24日~9月25日
 調査対象企業:アジア・オセアニアの計20か国・地域に進出する日系企業
 対象企業数:14,399社、有効回答数:5,976社〔回答率:41.5%〕
 *在シンガポール進出日系企業の対象企業数:1,113社、有効回答数:622社〔回答率:55.9%〕
 

営業利益見通し(黒字企業比率)

 進出日系企業の景況感は、アジア通貨危機、リーマンショック、東日本大震災などの危機前後をさらに下回る過去最低の水準に落ち込んだ。国・地域別では、東南アジアではインドネシア、タイ、フィリピンや、南西アジア(インド、バングラデシュ、パキスタン、スリランカ)での落ち込み幅が大きかった。他方、中国や韓国では黒字企業の割合が6割以上、7割以上と相対的に高く、経済回復の傾向がうかがえた。
 
 シンガポール進出企業の黒字企業比率は50.5%(前年比14.1ポイント下落)、赤字は29.9%(同12.6ポイント上昇)で、全体平均と比較すると影響の程度は限定的だった。うち、「内販型(輸出比率が50%未満の企業)」の黒字比率は44.0%(前年比率16.9ポイント減)、「輸出型」は56.6%(前年比14.8ポイント減)とともに同程度で悪化し、内需型が前年度と同様に不調だった。
 

事業拡大意欲(今後、1-2年の事業展開の方向性)

 アジア・オセアニア地域では36.7%の企業が「拡大」と回答したが、新型コロナの影響で、同割合は前年比12.2ポイント低下した。前年調査でも多くの国・地域で低下し始めていたが、2020年調査ではすべての国で落ち込み、過去最低の水準となった。一方、「縮小」もしくは「第三国(地域)へ移転・撤退」と回答した企業の割合は9.1%と、 19年調査(4.7%)から4.4ポイント上昇したが、合計1割未満にとどまる。「現状維持」とする企業は多くの国で5割を超え、企業は先行きが不透明な中で様子見の姿勢を示している。
 
 国・地域別では、南西アジア(パキスタン、インド等)での拡大意欲が相対的に高い。シンガポール進出企業は30.0%が「拡大」と回答(前年比で13.9ポイント下落)、60.8%が現状維持、9.2%が「縮小」もしくは「第三国(地域)へ移転・撤退」と回答。
 

新型コロナウイルス感染拡大の影響とビジネス見直し

 アジア・オセアニア地域の進出企業にとって、新型コロナによる販売市場の消失(国内市場、輸出先)、渡航制限・入国制限が主要課題。ビジネス正常化の時期の見通しは、「すでに正常化(10.1%)」「2020年内(9.1%)」「2021年中(63.2%)」が多い。シンガポール進出企業は「すでに正常化(4.3%)」「2020年内(6.4%)」「2021年中(71.0%)」とやや慎重にみている。
 
 新型コロナを受けた現地での事業戦略やビジネスモデルの見直しを行う企業の回答率は52.2%と半数を超えた。シンガポールでは59.7%の企業が新たな事業・販売戦略やビジネスモデルの構築を急いでおり、域内平均よりやや高めの水準。シンガポール進出企業による見直し内容は、「販売先の見直し(20.6%)」「バーチャル展示会などの活用の推進(35.1%)」「AI利用などデジタル化の推進(36.6%)」など販売面においてオンライン化、デジタル化の動きが主体。管理・経営体制では、「在宅勤務やテレワークの活用拡大」が78.3%と全体平均(53.8%)と比較して圧倒的に高い。
 
 なお、アジア大洋州地域において、「生産地の見直し」によりサプライチェーンの抜本的変更を考える企業は5.9%にとどまる。
 

経営上の課題

 シンガポール進出企業にとっての経営上の課題は、前年までは、「従業員の賃金上昇」のような「事業コスト増加」に関わるような項目が多かった。2020年は、新型コロナによる世界的な景気低迷(内需・外需)で、「新規顧客の開拓が進まない(48.9%)」「主要販売市場の低迷(消費低迷)(47.0%)」「取引先から発注量の減少(44.6%)」が上位項目となった。また、「限界に近づきつつあるコスト削減(45.4%)」の回答率も高く、進出企業は、経営の現地化など、合理化・効率化へ向けた取り組みが増えるとみられる。
 

通商環境の変化の影響

 通商環境の変化が2020 年の業績に与える影響は、全体では「影響はない」「分からない」との回答が多いものの、香港・マカオ(46.3%)、中国(38.4%)、韓国(34.8%)、オーストラリア(31.7%)で「マイナスの影響がある」との回答が3割を超えた。シンガポールは25.4%で平均(23.1%)をやや上回る水準だった。ベトナム、バングラデシュ、インドでは、通商環境の変化による業績へのプラスの影響が10%を超えた。
 

イノベーション・デジタル

 シンガポール回答企業のうち、現地スタートアップとの連携について、「すでにしている(52社)」「予定がある(35社)」となり、東南アジア・南西アジアで最も多く、ベトナム、インドネシア、インドが続いた。シンガポール進出企業が現地スタートアップとの連携でターゲットとする国・地域は、ASEANが最も多かった。ベトナム、インドネシア、インドの進出日系企業は現地国内市場を主なターゲットとしており、シンガポールはASEANを管轄するインキュベーション拠点として位置づけられていることが伺えた。
 
 そのほか、詳細は「2020年度 アジア・オセアニア海外進出日系企業実態調査」結果(ジェトロ東京発表資料)を参照の事。
 

提供:ジェトロ・シンガポール事務所

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