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2019年12月27日

マレーシア 2019 重大ニュース

 史上初の政権交代で2018年5月より再びマレーシアのトップとなったマハティール・モハマド首相。マニフェストの公約通り、着実な政策を行ってきているが、ナジブ前首相や前政権の置き土産ともいえる約1兆リンギの政府債務など、いまだ課題は山積みである。政権交代による最大の変化は、汚職や不正といった体質からイメージ回復に努めていることだろう。
 経済的には、民需が伸びており、良い傾向である。しかしマレーシア工業生産は、輸出向けが中心であるので、世界需要の変動など外的要因による影響を受けやすいので注意が必要である。”2020年までに先進国入りを果たす”という「VISION 2020」で掲げた目標実現に向けて発展するマレーシアの2019年を振り返る。
 

汚職根絶5ヵ年計画を開始、首相の任期に制限

 政府は1月29日、汚職防止5ヵ年計画(NACP)を開始した。2023年をめどに政府機関、公共部門における汚職を根絶する。開始を宣言したマハティール・モハマド首相は「過去の行いを罰するものではなく、今後の汚職を防ぐのが目的の計画だ」と未来志向を強調した。
 計画は22の戦略、115のイニシアチブで構成しており、首相府傘下の統治・清廉潔白・汚職防止センターが策定した。
 具体的には、首相、州首相の任期を制限するため連邦・州憲法の改定を目指す。電子的手段を用いた投票の可能性を探る。
 政治資金に関するイニシアチブでは、ロビー活動の禁止、政治家への贈与、もてなしについて新法を制定する。
 法定機関の長、理事に政治家を任命する場合、学術的背景、専門職の知識・経験があることを条件とするとの規制を導入する。
 

中銀が約3年ぶり利下げ、貿易摩擦の影響懸念で

 マレーシア中央銀行は5月7日、翌日物政策金利(OPR)を3.25%から3.00%に引き下げると発表した。利下げは2016年7月以降初めてで約3年ぶり。米中貿易摩擦などで国内経済成長の下振れリスクが高まる中、利下げにより政府の2019年の経済成長目標である4.3〜4.8%の達成を後押しする。
 中銀は、米中貿易摩擦やコモディティー価格の低下が国内経済の下振れリスクになると説明。インフレが抑制されている中、リスクを和らげるため協調姿勢を強め、利下げに踏み切ったとした。
 ザ・スター・オンラインによれば、UBSのアナリストは、今回の利下げはリスクに対応するための調整であり、経済成長や物価に大きな問題が生じているわけではないと説明。この先利下げが続く状況にはないだろうとの見解を示した。
 なおアジア・オセアニア地域で2019年に利下げを行うのはインドに次いで2ヵ国目。この時点でフィリピンやニュージーランドも続く可能性があるとみられていた。
 

20年度予算案を発表、景気刺激に重点

 リム・グアン・エン財務相は10月11日、国会で2020年度予算案を発表した。歳入と歳出を前年より低く抑える一方、米中摩擦の影響による輸出低迷で景気冷え込みが予想される中、公共投資を厚めにする。投資誘致に向けた優遇策も複数盛り込むなど、景気刺激に重点を置いている。各紙が報じた。歳入は前年比7.1%減の2,445億3,000万リンギ(約6兆6,023億円)、歳出は6.0%減の2,970億2,000万リンギ(約8兆195億円)に設定。財政赤字の国内総生産(GDP)比は3.2%で、以前公表していた3.0%より高めた。ただ19年見込みの3.4%からは縮小させる意向。中期的には平均2.8%を目指すとしている。公共投資予算は560億リンギ(約1兆5,120億円)で、前年から4.3%増やす。クアラルンプールの大量交通システム(MRT)やボルネオ島のパン・ボルネオ高速道路の建設などで運輸部門の予算を前年から8.8%拡大させる。リム財務相は「外部環境が想定より悪い場合には、(公共投資拡大などで)景気を刺激する必要がある」と述べた。
 全国一律で月1,100リンギ(約3万円)の最低賃金については、20年から主要都市で1,200リンギ(約3万3,000円)に引き上げる。また不動産市場の在庫だぶつきを解消するため、外国人が購入できる高級物件の最低価格を現在の100万リンギ(約2,700万円)から60万リンギ(約1,620万円)に引き下げるとしている。
 
■GDP成長率、やや加速想定
 予算案策定に当たり、20年のGDP成長率は4.8%を想定。19年見込みの4.7%からやや加速するとみている。インフレ率は2.0%を想定しており、19年見込みの0.9%から上昇すると予想。消費伸び率は4.8%を想定。輸出伸び率は1.0%と低率を見込むが、19年の0.1%からは拡大するとみている。
 20〜22年の原油価格は1バレル当たり平均60〜65米ドル(約6,600~7,200円)を想定。20年の国営石油ペトロナスから国への配当は240億リンギ(約6,500億円)を見込む。
 
■中国企業誘致に意欲
 投資誘致に向けた新たな優遇策は20年1月1日までに最終化させる。電気・電子産業に対する10年間の法人税免除を検討しているほか、世界に物やサービスを輸出する大企業を呼び込むため、こうした企業を対象に向こう5年で年10億リンギ(約270億円)規模の投資優遇策を実施する方針。また、中国企業が投資を容易に行えるための施策「スペシャル・チャンネル」を20年1月に開始する。
 

バンダル・マレーシア再開、中国企業が巨額投資へ

 マレーシアが中国資本を活用して大規模な都市開発計画を再始動する。マハティール首相は4月19日、「バンダル・マレーシア」の開発計画を進めると発表。中国企業と組成するコンソーシアムを母体として、建設に乗り出す方針を打ち出した。
 開発エリアの総面積は197万平方メートル。クアラルンプール市内のスンガイベシ空港跡地に公共公園、廉価住宅1万戸などを整備する。総額1,400億リンギ(約3兆7,800億円)の投資規模を想定した。
 バンダル・マレーシアの計画は、事業費の支払いをめぐる問題が浮上。ナジブ前政権時代の2017年にいったん中断されていた。
 当初はマレーシア政府系ファンドのワン・マレーシア・デベロップメント(1MDB)が計画を策定。1MDBを巡っては、複数の不正が指摘されてきた。1MDBは15年12月31日、バンダル・マレーシアの権益60%をマレーシア企業と中国国有・中国中鉄股フンの合弁会社に売却。71億1,000万リンギ(約1,920億円)で譲渡し、負債を圧縮した。バンダル・マレーシアに対する出資比率は、マレーシア企業と中国中鉄の合弁会社が60%、マレーシア政府が残り40%となっている。
 資本が潤沢な中国にマレーシアは接近するスタンス。マレーシア政府は4月12日、凍結していた東海岸鉄道(ECRL)建設を再開すると発表した。建設コストをめぐる中国交通建設との再交渉で、一部路線を変更して総延長を40キロメートル縮小し、建設費を当初計画の655億リンギ(約1兆7,685億円)から440億リンギ(約1兆1,888億円)に3割下げて進めることで合意した。5月にも建設を再開し、26年12月の完成を目指す。
 この案件はナジブ前政権時代に決まり、中国交通建設が17年に着工した。ただ18年5月に誕生したマハティール新政権が財政難を理由に一度凍結。その後の再交渉でマレーシア側はコストを抑える内容での工事再開を目指していた。完成すればマレー半島東部の発展に寄与するとともに、中国の習近平国家主席が進める広域経済圏構想「一帯一路」の実現を後押しする。
 

上期の投資認可額、8%増の920億リンギ

 マレーシア投資開発庁(MIDA)の8月16日発表によると、2019年上半期の投資認可額は前年同期比7.6%増の920億リンギ(約2兆4,840億円)だった。電気・電子分野で米国のメーカーなどから大型投資があり、外国直接投資(FDI)が倍増。分野別では製造業への投資が好調だった。全体の認可件数は2,554件。合計で5万9,542人の雇用創出が見込まれている。
 FDIは97.2%増の495億リンギ(約1兆3,365億円)に拡大。一方で国内からの投資は3割近く減少した。分野別の認可件数は、製造業が74.2%増の331億リンギ(約8,937億円)と大きく伸び、サービス業は550億リンギ(約1兆4,850億円)、農鉱業は39億リンギ(約1,053億円)だった。
 製造業は外国からの投資が4分の3を占めた。雇用創出は3万449人で、内訳は電気・電子エンジニアが1,829人、機械エンジニアが896人などとなっている。国別の投資額は最大の米国が117億リンギ(約3,160億円)。これに中国が48億リンギ(約1,296億円)、シンガポールが31億リンギ(約837億円)、日本が21億リンギ(約567億円)で続いた。大型案件は、◆中国の西安隆基硅材料による単結晶シリコン太陽電池セル生産事業の拡張◆電源メーカーの米アドバンストエナジーインダストリーズによる新規事業◆半導体の米オン・セミコンダクターによる事業拡張◆電子機器受託製造サービス(EMS)の米プレクサスによる事業拡張――などがある。
 サービス業は国内投資が6割を占め、業種別では最大の不動産業が35.1%減の185億リンギ(約5,000億円)と大きく落ち込んだ。サービス業全体の雇用創出は2万8,650に上る。
 

地域統括拠点への税優遇拡大、投資誘致狙う

 マレーシア政府は10月8日、同国に地域統括拠点を置く企業への税優遇制度「プリンシパル・ハブ・インセンティブ(PHインセンティブ)」を拡大すると発表した。米中貿易摩擦が長期化する中、優遇拡大することで外資を呼び込みたい考えだ。
 マレーシア投資開発庁(MIDA)は発表文で、PH認定を受けた企業に対しては10%の法人税率を適用すると説明(通常は24%)。PHインセンティブは2015年に導入され、これまでは一定の方法で計算した収益の増分に対して税優遇がなされていたが、今後は課税所得に対して10%とする。
 MIDAはまた、今後マレーシアに域内統括拠点を新設する企業に対しては、コミットメントのレベルに応じて向こう10年は法人税を0〜10%にするとしている。
 PHインセンティブの対象は、域内またはグローバルの事業に関連したリスク管理、意思決定、戦略的事業活動、貿易、財務、マネジメント、人材育成などの運営やサポートを行う法人。これまでに認定を受けたのは35社で、これら企業は2,700人の高スキル人材を採用し、355億リンギ(約9,585億円)の投資認可を受けている。
 

中銀が仮想銀行の推進に本腰、20年第3四半期には第1号誕生も

 中央銀行バンク・ネガラは先頃、仮想(バーチャル)銀行免許の要件を年内に発表する意向を表明した。マレーシア・フィンテック協会(FAOM)は、欧米、豪州、香港に追いつく必要性を中銀が認めたものとした。早ければ20年第3四半期にも仮想銀行の第1号免許が交付されるという。
 仮想銀行は、店舗を持たず仮想空間の中でインターネットなどの通信手段を利用し、現実の銀行と同様のサービスを提供する。
 マレーシアはイスラム式銀行で世界をリードしており、世界初のイスラム式仮想銀行がマレーシアで誕生する可能性も高いという。
 フロスト・アンド・サリバン・マレーシアのハズミ・ユソフ代表は、仮想銀行が誕生しても従来型銀行が大打撃を受けるようなことはないとしている。窓口での取引を好む顧客がいること、また従来型銀行は既にデジタル技術を取り入れており、経験、経営資源が豊富なため、純粋な仮想銀行と比べ優位点が多いという。

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