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シンガポール不動産「耳寄り情報」

2012年6月18日

契約書をちゃんと読むことが肝心

前回、「良い家主にめぐり会う以上の幸運はない」と申し上げましたが、実際のところ、事前に家主についての詳しい情報を得ることは、なかなか困難です。家主側エージェント自身が、家主の住所・氏名以外の詳しい情報を持ち合わせない場合も多いのが現実。

入居してから後悔しないための大きなポイントは2つ。「家主について可能な限り情報収集する」、そして「契約の中身をきっちり読んで確認する」です。

 

1. 登記簿や固定資産税台帳の記載内容の確認

登記簿抄本(Title Copy)または固定資産税台帳写し(Property Tax Valuation)をエージェント経由で入手し、”家主”が本当に所有者かどうか必ず確認しましょう。”家主”を装って、敷金や家賃を詐取する刑事事件も時々あります。また、共同所有の物件にもかかわらず、単名での契約になっている場合も注意が必要です。

2. 家主の職業・居住地・人柄・評判などを調べる

家主の国籍・住所は、登記簿からもわかります。家主が海外在住の場合は、入居中のトラブルには誰が責任を持って対処するのか事前に明確にしておきましょう。家主の職業・ポジションなどは、ネットでの検索で手がかりがつかめる事も多いものです。

3. 契約書の内容には必ず目を通す

借り手の立場を守ってくれるのが、「契約(Tenancy Agreement)」です。契約書の中身をよく読まずにサインするのは、自殺行為。内容に不利な点があれば質問して、修正の要求もしましょう。

4. 部屋によって家主事情はそれぞれ、途中交代も

シンガポールの住宅は、ほとんどが一軒毎に分譲されていて、家主も一軒ずつ異なり、氏素性もまちまち。契約期間中(通常2年間)の途中売買も当たり前です。入居した時の家主は鷹揚で太っ腹でも、途中からセコい”銭ゲバ”家主に代わってしまうことも。

5. 借主からの契約解除

シンガポールでは、日本のように、個別の賃貸契約に優先する「借家法」はありません。たとえば、契約解除については以下のように異なります。

日本:借り手は、理由の如何を問わず、いつでも1ヵ月通知で契約解除可

シンガポール:2年契約であれば、2年間解除不可。転勤解約特約が付いている場合でも、通常最低14ヵ月間は解約できない

しかし、シンガポールでは借り手に常に不利というわけでもありません。

日本:入居時に家主に対して「礼金」が必要な場合が多い。また、(身元)保証人が必要な場合がほとんど。

シンガポール:上記のいずれも不要

6. 困った時には契約に記載の権利行使を

書面契約がしっかりしていれば、家主が義務を守らない場合には、安価・簡便に公的機関の支援も受けられます。当地には、Small Claims Tribunalsという主として消費者保護のための小額裁判所があり、1万シンガポールドルまでなら、敷金返金請求のみならず、修理要求や修理代請求なども、数十ドル程度の所定費用で、判決を得られます。 そのためには、不慣れな英文契約ではありますが、「契約書」は、署名前に一字一句きちんと読みましょう。

 

文=木村登志郎(パシフィック不動産株式会社CEO)

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.214(2012年06月18日発行)」に掲載されたものです。

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