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シンガポール不動産「耳寄り情報」

2013年8月19日

店舗を借りる

シンガポールで出店したいとの問合せをよく頂戴しますが、実はなかなか大変です。特にF&Bスペース(レストラン、カフェ、バーなど)を借りるのが最も困難です。

1. 家主の圧倒的な貸し手市場
分譲の結果1軒1軒が「個人」所有となっている住宅とは対照的に、民間商業不動産の場合、特に店舗スペースは、「大手法人」による寡占状態です。特に国土が狭く、都市計画も厳しくなされているシンガポールでは、人気が高く多くの客入りが期待できる限られた地域、例えばオーチャードや主要ターミナル駅周辺などで店舗スペースを確保するのは至難の技です。オフィスやアパートとは違って、早い者勝ちで貸してもらえるわけではありません。

2. 「カネ」「コネ」「チカラ」
店舗スペースは「利権」とまでは言わずとも、コモディティー的箱物貸借であるオフィスやアパートとは違って、「ビジネス・チャンス」の取引です。当地での出店実績がなく、知名度の低い外国人・外国企業が、店舗を借りたいと言っても、簡単には貸してもらえません。「カネ」「コネ」「チカラ(実績)」が必要と言われるゆえんです。

3. 賃料(=「カネ」)が高い
人気の高い地域での賃貸料は、平方フィートあたり月S$20以上はザラです。また、特にショッピング・センターなどでは、固定賃料以外に、GTO(売上高)に対して特定パーセントの付加賃料が課せられるのが一般的です。

4. 出店実績(=「チカラ」)がないと貸してもらえない
路面店舗の賃料は特に高額ですが、お金さえ出せば借りられるわけではありません。路面店舗は、特にモールにとっては言わば「顔」。家主を安心させるような出店実績やビジネス・コネクションが無いと、ほぼ不可能。

5. 不動産仲介手数料、権利金、改装費
不動産仲介料として家賃1ヵ月分を借り手が負担するのが一般的(=家主は負担せず)。店舗によっては、既存テナントの内装買取名目等で立退料・権利金(Take Over Fee)を支払わないと、物件確保できない場合もあります。店舗の場合、「天井無し、床はコンクリ打ちっぱなし、フロント(通路との仕切り)無し」が、標準引渡し条件のため、改装費が高額となります。いわんや、キッチン設備導入をともなうF&Bにおいてをや、です。

6. 景気下降局面こそが店舗確保のチャンス
好景気時には、日本の超有名企業といえども、優良店舗スペースの確保は極めて困難でしたが、米国サブプライム問題やリーマン・ショックで既存テナントの賃貸意欲が落ちたのを機に、すかさず日系新規進出企業が出店しています。その点では、今も出店の好機ではないでしょうか?

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文=木村登志郎(パシフィック不動産株式会社CEO)

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.240(2013年08月19日発行)」に掲載されたものです。

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