シンガポールのビジネス情報サイト AsiaXライフTOP『間宮兄弟』江國香織

紀伊国屋「おすすめの1冊」

2004年11月29日

『間宮兄弟』江國香織

photo-18女性に人気の江国香織の新作。だがこの作品は男性こそお勧めしたい。30を過ぎた主人公の間宮兄弟は、ちょっと趣味が内向的で女性からみると「格好わるい」し、「気持ちわるい」。でも、男からみると、至極普通でまじめで純粋で憎めないキャラである。多少イケていないかもしれないけれど…。女性に臆病で満足にデートに誘うこともできない兄と、恋愛に一生懸命だけれど不器用でひとりよがりな弟。

彼らの微妙な気持ちが痛いほど伝わってくるとともに、読者自身の心中を見透かされているように思えて恐ろしいような不安をも感じる。女性の著者が何故ここまで男心がわかるのか不思議なほどだ。

そもそも、一般に小説に登場する男性はカッコよすぎるのではないかと思う。特に男性作家は、自分自身と混同されることを恐れているのではないかと思うほど、情けない男性心理を描くのが下手だ。こういう心理は自虐的に描いても、軽蔑的に描いても読者は不快なだけである。そのようにならずに、ありのままの男性心理を描くのは女性だからこそできることなのかもしれない。

 

小学館

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.022(2004年11月29日発行)」に掲載されたものです。
文=親松

おすすめ・関連記事

シンガポールのビジネス情報サイト AsiaXライフTOP『間宮兄弟』江國香織