シンガポールのビジネス情報サイト AsiaXライフTOP『デセプション・ポイント/上・下巻』ダン・ブラウン

紀伊国屋「おすすめの1冊」

2005年5月2日

『デセプション・ポイント/上・下巻』ダン・ブラウン

photo-12『天使と悪魔』『ダ・ヴィンチ・コード』に続く、ダン・ブラウンの邦訳第3作目。他の2作同様に、読み始めたら最後まで止まらない。謎解きの面白さというより、絶妙なプロット運びに脱帽させられる。物語はNASAがある重大な大発見をするというところから始まる。だがその信憑性が怪しいことは、既にタイトルが示している(デセプション=偽り)。他の2作を読んだ人には、誰が黒幕かを類推することさえ難しくない。それにも関わらず、読者をグイグイ惹きつける手法はまさに職人芸。一見つながりがないような数々の事柄や人物が、徐々に一つの線になる様は快感である。語りの巧妙さと同時に、綿密な調査をし全て科学的事実に基づいていると主張していることもこの著者の売りである。翻訳版の表紙には星条旗が描かれ、ホワイトハウスの内幕ものとして売り込みたいという目論見を感じるが、実際には科学的な事実をふんだんに盛り込んだ科学もののサスペンスという方が近いはず。ちなみに原書の表紙は氷山の絵で、こちらの方が作品の魅力をよく伝えている。『ダ・ヴィンチ・コード』でも体験した「えっ、これも本当のことなの?」という驚きが読者を待っている。

 

角川書店

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.042(2005年05月02日発行)」に掲載されたものです。
文=親松

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