2007年8月20日
『奇術師』クリストファー・プリースト
日本で「トリック」というドラマがあったが、あれにハマった人にお勧めしたいのが、この「奇術師」。
2005年か2006年版の「このミステリがすごい!」の海外翻訳ミステリの第10位入賞作。日本で上映されたかどうかはわからないが、昨年当地で上映されたハリウッド映画「The Prestige」の原作でもある。因みに監督は、「メメント」のクリストファー・ノーラン。二人のマジシャンは、ヒュー・ジャックマンとクリスチャン・ベールが演じている。
こう書くと、まるでミステリ作品のような気がしてくるが、そう思って読んでしまうとと「インチキだよ、これは」と叫びたくなるかもしれない。実際には、World Fantasy Award(世界幻想文学賞)受賞作で、純粋なミステリとは言いがたい。
アルフレッド・ボーデンとルパート・エンジャ、どちらも瞬間移動を売り物にしている稀代の奇術師。納得できるかどうかは別にして、両者の瞬間移動には「そこまでやるか?」と思わざるを得ないタネが隠されている。隠されていないと言えないこともないが、残念ながらタネ明かしはご法度。
早川書房
協力=シンガポール紀伊國屋書店
この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.104(2007年08月20日発行)」に掲載されたものです。
文=シンガポール紀伊國屋書店 茂見