シンガポールのビジネス情報サイト AsiaXライフTOP『下山事件 最後の証言』柴田哲孝

紀伊国屋「おすすめの1冊」

2007年10月1日

『下山事件 最後の証言』柴田哲孝

photo-82008年には平成元年に生まれた人たちが成人式を迎え、確実に昭和は過去の時代となりつつあることを感じる。「激動」と言われた昭和の中でも特に終戦からGHQ統治時代は謎が多いが、昭和24年に戦後最大の謎とされる「下山事件」が起きている。

今はJRという名を持つ鉄道会社6社は、もともとは国営で、昭和24年に運輸省から独立した日本国有鉄道公社(国鉄)が母体。その国鉄の初代総裁、下山定則が同年7月6日に轢死体で発見されたのが「下山事件」。

著者の柴田哲孝が、大叔母から祖父が下山事件に関与していたことを聞き、調査を進めてまとめ上げたものが本書。

基本的には状況証拠だけで推理を進めており、雑に感じるところや飛躍しすぎるところがあるが、一読してみて概ね納得できる理論を展開している。利害関係を明らかにしているのが、シンプルでわかりやすい。

GHQ統治下の吉田茂、佐藤栄作、白洲次郎、矢板玄、沢田美喜等の暗躍が非常に興味深い。また、矢板の「ドッジ・ラインとは何だったのか。ハリー・カーンは何をやろうとしていたのか」という言葉に対する仮説も新鮮で面白い。

 

祥伝社

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.107(2007年10月01日発行)」に掲載されたものです。
文=シンガポール紀伊國屋書店 茂見

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