2012年7月16日
『チャイナ・ジレンマ』小原雅博
近年ますます存在感を増している中国。日本のニュースでも、何かしらの話題に触れない日はない。しかし、受身で目にする情報だけではイメージが先行し過ぎて、実際の姿が見えにくくなるように感じる。日本は、私たちはかの国とどう付き合っていけばよいのか。
本書で示される指針は、対中外交にかかわり、深く中国を理解した著者の言葉だけに具体的で力強い。めざましく経済成長を続ける中国がもたらす経済チャンスと、一方で軍事力の伸長や体制・価値観の軋轢が生む政治・安全保障リスク。中国との関係はこのジレンマを抱えながらコントロールしていかなければならないという。
また、矛盾や課題を含みつつ、10年ぶりの最高指導部交代という政治移行期を迎えている中国。巨大で外からは見えにくい内情も多面的に検証し、現状と行方を分析している。
写真も多く、多彩な話題と分かりやすい説明で、お隣の国とのこれからを考えるために最適の1冊。
ディスカヴァー21/ISBN:9784799311769
協力=シンガポール紀伊國屋書店
この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.216(2012年07月16日発行)」に掲載されたものです。
文=シンガポール紀伊國屋書店 河合