2025年2月4日
非美学 ジル・ドゥル-ズの言葉と物
今回は、毎年恒例の「紀伊國屋じんぶん大賞」受賞作を紹介したい。
紀伊國屋じんぶん大賞は2011年に始まった賞で、過去一年間に刊行された人文書の中からベスト30が選ばれる。
今回大賞を受賞したのは、福尾匠の『非美学 ジル・ドゥル-ズの言葉と物』。
ご存じの方も多いとは思うが、ジル・ドゥルーズとはいわゆるフランス現代思想を代表する20世紀の哲学者だ。
著者の福尾匠は、2018年に同じくドゥルーズを論じた『眼がスクリーンになるとき ゼロから読むドゥルーズ『シネマ』』でデビューした気鋭の研究者。
本作は著者の博士論文をもとにした、本格的な哲学/批評の本で、この種の分野に慣れていないと読み通すのは難しいかもしれない。
しかし、例えば1980年代に「ニュー・アカデミズム」のブームが起こった際、同じく難解な哲学書である浅田彰『構造と力』がベストセラーとなったように、あるいは2012年に紀伊國屋じんぶん大賞を受賞した國分功一郎『暇と退屈の倫理学』が現在は文庫化されてやはりベストセラーとなったように、多くの読者に求められる哲学書というのは時折現れる。
本書もそのような一冊になることを期待したい。
>>紀伊國屋じんぶん大賞2025 発表 大賞 福尾匠さん『非美学 ― ジル・ドゥルーズの言葉と物』読者と選ぶ人文書ベスト30