2020年7月8日
男性の尿道炎 ~淋菌性とクラミジア性の違い~
排尿痛と尿道分泌物を生じる病気を尿道炎と呼び、性感染症で起こるものと他の原因で起こるものとに分けられます。性感染症によるものは、原因微生物により淋菌性、クラミジア性、非淋菌・非クラミジア性尿道炎などに分けられます。淋菌とクラミジアの混合感染するケースもあります。
淋菌性とクラミジア性尿道炎の違い
淋菌性とクラミジア性尿道炎では、潜伏期間、発症や排尿痛の程度、分泌物の量と色調などに違いがあり、これらにより大まかに鑑別できます(表参照)。
淋菌性 | クラミジア性 | |
潜伏期間 | 3~7日間 | 1~3週 |
排尿痛 | 強い | 軽い(ヒリヒリ) |
発症 | 急激 | 比較的ゆっくり |
分泌物 | 膿性、黄白色 | サラサラ、透明~白色 |
診断のため、尿道分泌物を綿棒で採り、初尿による検尿を行います。淋菌は培養が難しいため、分泌物中の淋菌を顕微鏡で探します。クラミジアも培養できないため、クラミジアのDNAを検査します。
淋菌(Neisseria gonorrhea)感染症
男性では急性尿道炎を生じますが、放置すると前立腺炎、精巣上体炎となり、後遺症として尿道狭窄を起こすこともあります。女性では、子宮頚管炎や尿道炎が生じますが、自覚症状のない場合もあります。他にも咽頭炎を起こしたり、妊婦が感染すると新生児に結膜炎が生じる危険もあります。
淋菌の抗生剤に対する耐性化が進んでいるため、現在、確実に淋菌に有効な抗生剤は注射薬しかありません。
クラミジア(Chlamydia trachomatis)感染症
男性では、急性尿道炎を生じますが、さらに前立腺炎、精巣上体炎を起こすこともあります。女性では、子宮頚管炎を生じますが、さらに感染が進むと、子宮内膜炎、卵管炎、肝周囲炎等を起こします。
クラミジアは、内服の抗生剤で治療します。
注意点
・感染のきっかけとなった性交渉でコンドームを着けなかった場合には、HIV、B型肝炎、梅毒の感染の可能性もあるため、抗体等の血液検査を行う必要があります。
・ピンポン感染とは、パートナー同士で卓球のラリーのように性感染症をうつしあうことを言います。ピンポン感染を防ぐためにはパートナーと一緒に検査・治療することも大切です。
・シンガポールでは、性感染症であるクラミジア性尿道炎や淋菌性尿道炎、梅毒、性器ヘルペスの患者は全て保健省に報告します。ただし、患者のプライバシーに関してはイニシャル、性別、人種、居住の有無のみ報告します。
取材協力=日本メディカルケアー 医師・吉國 晋
本記事は一般的情報の提供のみを目的として作成されており、個別ケースについて、正式な助言なく、本情報のみに依存された場合は責任を負いかねます。