2020年5月3日
健診で腎機能が低下していると言われた…どうすれば良い?
血液は腎臓の糸球体(しきゅうたい)でろ過されて血中の老廃物が取り除かれ、老廃物が尿中に排出されます。腎臓が障害されたり、腎機能が低下したりすると全身のさまざまな部位に影響が現れます。脳卒中や心筋梗塞を起こす危険性が高くなり、貧血、高血圧、骨関節障害といった合併症を生じることもあります。
腎臓の障害や機能低下を起こす原因は慢性糸球体腎炎、糖尿病性腎症など多種にわたりますが、原因によらず腎臓が障害されて腎機能が低下した状態を慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease/CKD)と呼びます。慢性腎臓病は適切な治療を受けないと腎不全へと進行し、透析療法や腎移植が必要になる可能性があります。現在、日本には慢性腎臓病の患者が1,300万人以上いると言われており、これは成人の8人に1人に相当します。
慢性腎臓病の診断方法
慢性腎臓病の診断には、タンパク尿と血中クレアチニンを測定するため尿検査と血液検査を行います。
腎臓の糸球体にあるろ過膜が障害されると、血液のタンパクが尿に漏れ出ます。タンパク尿検査結果は-、±、1+、2+などで表され、-、±が正常で+の数値が大きくなるほどタンパクの濃度が高くなります。糖尿病患者では尿中の微量アルブミンを測定することもあります。
血液中の老廃物であるクレアチニンは、腎臓でろ過されて尿中に排出されますが、腎機能が低下するとクレアチニンを十分に取り除くことができなくなり、血液中に含まれるクレアチニンの量が増加します。血中クレアチニン値や年齢、性別から、腎機能がどの程度残っているかを表す値がeGFR(推算糸球体ろ過量)で1分間にどれだけの血液をろ過して尿を作れるかを示します。eGFRが60未満になると腎機能が低下した状態であり、30未満になると腎不全の状態です。
「タンパク尿が1+以上」「eGFRが60未満」のいずれか、もしくは両方が3ヵ月以上続いている場合に慢性腎臓病と診断されます。
腎機能を示すeGFRは、健康な人でも加齢とともに少しずつ低下するのが一般的です。40歳代でeGFRが60未満の人は加齢に伴って腎機能が低下していくだけで将来腎不全になる危険性がありますし、さらに高血圧や糖尿病がある場合は50~60歳代で腎不全になることもあります。
慢性腎臓病と診断されたら?
診断された場合、まず原因を見つけることが重要です。早期であれば原因を治すことで完治も可能ですが、eGFRは一度低下すると改善させるのは難しいため、進行した場合はそれ以上悪化しないように治療します。
最近増えているのは生活習慣病による慢性腎臓病です。高血圧、糖尿病、高脂血症などにより動脈硬化が進行すると、慢性腎臓病を発症したり悪化させたりします。逆に慢性腎臓病は高血圧を悪化させたり、動脈硬化を進行させることにより脳卒中や心筋梗塞を発症する危険を高めます。
生活習慣病が原因で発症した軽度の慢性腎臓病では、生活習慣改善のために減塩食や運動、禁煙を行い、肥満がある人は減量に取り組みます。血圧、血糖値、LDL(悪玉)コレステロール値を目標値にするために薬物治療が必要になる場合もあります。
慢性腎臓病(軽度)の目標値
血圧:130/80mmHg以下
血糖値HbA1c:7%未満、
LDLコレステロール値:120mg/dL未満
抗生物質や解熱鎮痛薬などの薬は腎臓で排出されるものが多く、腎機能が低下した人は薬の減量や中止が必要な場合があるため、風邪などで薬を飲む際には必ず医師や薬剤師にご相談ください。
取材協力=日本メディカルケアー 医師・吉國 晋
本記事は一般的情報の提供のみを目的として作成されており、個別ケースについて、正式な助言なく、本情報のみに依存された場合は責任を負いかねます。