2020年4月30日
シンガポール、大腸がんの発生率はどのくらい?
シンガポールでは、大腸がんは男性のがん罹患(りかん)数1位、女性は2位です。大腸がんは直腸結腸(大腸、消化管の最下部の肛門に近い部分)の内壁部分の粘膜の細胞から発生します。がん細胞が発見されずにいると、がんは大きくなり、大腸の管腔に入り込みます。また、腸の壁の外まで浸潤し、外部へ広がります。
大腸がんの一般的なリスク要因
大腸がん罹患者の大半は50歳以上の方で、加齢とともにリスクは高まります。また、以下に該当する場合もリスクが上がります。
●大腸ポリープや大腸がんの既往歴がある方
●潰瘍性大腸炎など、炎症性の腸の疾患歴がある方
●大腸がん、家族性大腸腺腫症、家族性非ポリープ型大腸がんの家族歴がある方
ポリープは、結腸・直腸の内壁上にできる良性の隆起性の病変です。茎が付いたぶどうが腸に張り付いたような状態で、一般的に50歳以上の方によく見られます。腺種性ポリープなどある種のポリープは、がんへと進行する場合もあります。そうしたポリープが発見された場合は、がんへの進行を防ぐため切除すべきです。大腸がんの初期段階の多くは自覚症状がないため、定期的に検診を受け、早期段階で発見することは非常に重要であり、かつ大腸がん治癒の可能性が高まります。
シンガポールにおける検査の種類
検査方法は複数あります。
免疫化学的便潜血検査(FIT)
FITは最も簡易な検査の一つで、大腸ポリープやがんによる大腸内での出血の有無を調べるものです。出血量が微量で、便潜血など目視で確認できない場合でも有効な特殊な便検査で行います。便潜血が陽性判定の場合、内視鏡検査などを行い、ポリープやがんなどの有無を検査します。
便潜血が陰性判定の場合も、直腸結腸ポリープやがんが全く無いという意味ではありません。また検査は100%正確というわけではなく、例えば部分加熱した肉やある種の食べ物によって、偽陽性の判定となる場合もあります。
軟性S状結腸鏡または大腸内視鏡検査
肛門からファイバースコープを入れて大腸と直腸を検査します。検査がS状結腸に限られる場合はS状結腸鏡検査、大腸全体を検査する場合は大腸内視鏡検査と呼びます。検査目的以外にポリープの切除、病変部分の病理検査、出血箇所の止血などの処置を検査中に行うことができます。
二重造影注腸検査
大腸と直腸の特殊な放射線検査です。この検査でポリープまたはがんの病変を発見しても、次は内視鏡検査で生体検査を行わなければなりません。
検査方法の目安
リスク要因のない方の場合、45歳~50歳から以下のような検査を開始することをおすすめします。
●免疫化学的便潜血検査を毎年
●S状結腸鏡検査を5年ごと、または大腸内視鏡検査もしくは二重造影注腸検査を5~10年ごと
リスク要因のある方は、検査開始年齢を早める、また検査頻度を上げることをおすすめします。検査で発見されたポリープはがんへの進行を防ぐために摘除すべきです。
取材協力=日本メディカルケアー 医師・ジョアナ・リム
本記事は一般的情報の提供のみを目的として作成されており、個別ケースについて、正式な助言なく、本情報のみに依存された場合は責任を負いかねます。