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学習

2019年3月28日

真の「生きる力」を身につける教育を〜自由自在にカスタマイズして、未来を切り開く人生をわが子に〜

 所狭しと実に多くの学校が点在する教育先進国シンガポール。駐在生活を経て帰国する予定の日本人家庭のお子さんらが多く通うシンガポール日本人小学校、様々な国籍の子供たちが集まり、英語で授業が行われるインターナショナルスクール、また、地元の子供たちが通う公立校があります。これからのグローバル社会でたくましく生きていく力を我が子に身につけて欲しいそう考える親御さんたちも多いはず。新しく来星された方も多いこの時期、今回はシンガポールの学校事情について特集します。

 

 

●日本人小学校
 シンガポール日本人小学校はシンガポール日本人会により設置されている私立校で、日本の文部科学省の学習指導要領に沿った教育内容、かつ、英語やICT(情報通信技術)に力を入れるなど独自のシステムを取り入れた学習指導が行われています。特に英語は、習熟度が12段階に分けられ、1年生から週1回実施。また、水泳と音楽の授業ではイマージョン教育(第2外国語で一部教科を教える教育的試み)を取り入れ、子供たちが積極的に英語へ関わる環境づくりがされています。授業で習得した英語を試すチャンスが日常生活のいたるところにあるので、英語でのコミュニケーション能力が飛躍的に伸びることが大いに期待できます。

 

 

 日本人学校は現在、チャンギ校とクレメンティ校があります。2校あわせて約1700人の生徒が在籍し、世界でも3番目の大規模校です。広大な運動場、年中常夏の学校生活を癒やす週1回の水泳授業、スコールや特に暑い日、強い紫外線を避けるためにいつでも運動が出来る体育館なども併設。休み時間には竹馬や縄跳び、ドッジボールなど思い思いの遊びをし、また、書き初め練習会、運動会、音楽界なども開催されています。

 

 子供たちはこれら日本の文化を取り入れた学校独自のイベントを体験しながら、規律ある環境の中、大勢の中の一人として行動することを学びます。またこの感覚が日本社会の中でどう大切にされているのかということも、しっかりと身につけていきます。現地校との交流会やアラブストリート、チャイナタウン、リトルインディアでの街体験、マレーシアなどの近隣国への修学旅行などのイベントもたくさん企画され、現地において、様々な文化体験をすることも大切にしています。

 

●インターナショナルスクール
 現在シンガポールには、各国の教育要領に基づいた様々な種類のインターナショナルスクールが約40校あります。普段見ることのできない様々な楽器や、アート媒体に触れる機会が設けられ、そこで学んだ手法・技法・アイデアを使って資料や作品を作ります。また、イベントを企画したりする自己表現の場が多くあり、様々な場で自分の主張を発信するという機会にも恵まれています。

 


 ただ、規模が大きな学校や人種に偏りがある学校に飛び込んだ時、自己主張の塊のような子供たちに圧倒されてしまう子供たちが少なからずもいるようです。違いを素直に受け入れられない場合、ストレスになり、自分の居場所に戸惑い始めることもあるので、好きなことや得意なことを発揮できる場所を見つけ出し、さらなる自信をつけられる
ようなサポートが出来るといいでしょう。子供たちの学習意欲は、心身ともに健全で自信を持ちつつ伸びていくので、カリキュラムをしっかり調べて選ぶこと。これは学校選びにもつながります。成績重視で育っている家庭の場合は、特に教科書や宿題がない、テストもないとなると不安になり、年齢が上がっていくごとに本当にこれでいいのかと戸惑うケースも多いようです。また、個性を尊重する素晴らしい点がある一方、規則などが徹底されていないので、自己を律することが必要です。学校任せにせず、家庭でのサポートにも重点を置きながら、子育て・教育を心がけることがとても大切です。

 

 

●ローカル小学校
 永住権(PR)を持たない外国人にとってローカル小学校への入学は難しい選択肢かもしれませんが、2018年からスタートしたシステムで、6月に“Online Indication of interest form”を提出すると学校登録の権利がもらえる可能性があり、挑戦してみようという人たちが増えてきました。近年、国際学力調査のどの分野でも1位に君臨しているシンガポールですが、これは義務教育期間である小学校6年間を通して、アカデミック分野への取り組みを徹底している成果からなるものです。義務教育終了時となる6年生の最後にPSLE(Primary School Leaving Examination)という国家試験が開催され、パスできなければ、セカンダリーエデュケーション(中学部)へ進めませんが、2016年度から3年間、毎年98.4%の合格率で、ほぼ全員の子供たちが通過しています。また、このPSLEは2021年にこれまでの全体の中での位置(順位)を測るスコアリングから、個人の資質・成長を図る方向へ改新されることが決まりました。それぞれの個性を育てる教育へと変化しているようにも見受けられ、受身ではなく、主体的に学んでいくことの出来る子が増えてくるのではないかと期待の声も多いようです。

 

 

 全ての学校がMOE(教育省)管轄下にある公立小学校ですが、学校の特色は実に様々で、アートやICTなどの特別な教育プログラムの発展を図るために設置された学校や、女子校・男子校、ミッションスクールなどもあります。最近では、就学前教育のために作られた幼稚園、“MOE Kindergarden”が併設されている学校も増えました。ローカル校では母語(マザータング)を英語、算数、理科と並んで必須科目として学習します。MTIL(Mother tongue in Leu)という部分的免除のようなシステムもあり、日本語など他の言語を中国語などの代わりに母語として登録し、学校外で勉強することも可能です。その場合には6年生のPSLEの際にはMTのテストは受けず、セカンダリースクールへ進学時に登録したものを必須科目として取っていく必要があります。とてもハードルが高いイメージがありますが、毎日授業がある中国語を習得できる環境は大変魅力的ともいえます。

 

 日本では2020年の教育改革に向け、世界で戦っていける子供たちの育成を目指し、試行錯誤を重ねています。シンガポールではMOEが主体となり学校を監修し、随時システムの見直しや新しいプログラムの導入が図られています。インターナショナルスクールでも世界基準の様々なプログラムを駆使し、学校ごとに特色をつけて子供たちの将来を豊かにしようと試みています。

 

 人生100年時代、幼い頃から海外体験を通して広い視野を持ちつつ、世界の将来を見据えてこの国で育つ子供たちは、この先、住む場所や職業など次々とカスタマイズしながら人生を切り開いていく時代を生きていくことでしょう。想像もつかないくらいのスピードで変わっていく世の中、子供たちが大人になり社会に出て行く頃には、その都度新たな問題や試練がたくさんあるかもしれません。彼らが親元を離れ、巣立つ際に、新しい環境で精神的に肉体的に辛くなることも多々あると思います。そんな時に、心の中で輝き続け、支えとなる「家族の思い出」を、今このシンガポールで慈しみ、育てましょう。過去、未来、360度、視野を大きく広げ、我が子をしっかり見据え、彼らに今何が必要なのか試行錯誤しながら、家庭での子育てを楽しむことが必要です。皆様のシンガポール生活が素晴らしいものになることを応援しています。

著者 :草埜 圭紀
兵庫県出身。Tufts University卒業。Grow UpGlobal主宰。シンガポールをベースに教育アドバイザーとして日本の教育関係者などへの学校訪問や、日本人ファミリーへのプライベートカウンセリングなどを行う傍ら、「グローバルに育つ・育てる」をテーマにfacebookから子育て教育情報を発信中。
https://www.facebook.com/growupglobal/

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.344(2019年4月1日発行)」に掲載されたものです。

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