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シンガポール不動産「耳寄り情報」

2018年5月25日

ダニアン・ガーデン・ストーリー いつまで続くか、再開発フィーバー

MRT南北線とダウンタウン線のインターチェンジ駅でもあるMRTニュートン駅から徒歩数分圏にある1992年竣工のダニアン・ガーデン(Dunearn Gardens、写真)が、この4月に一括売却されました。当地住宅市況の先行指標でもある既存物件の“一括売却フィーバー”は今のところ止まる気配は無く、まだしばらく続きそうです。

 

1.ダニアン・ガーデン一括売却成約価格 
ダニアン・ガーデンは総計114戸で、日本人駐在員家族にもお手ごろサイズの物件が多く、賃貸人気トップになったこともあるコンドミニアムですが、総額4億8,600万Sドルで一括売却が成立しました。

 

再開発の予定総床面積換算では、土地代だけで1平方フィート当り1,914Sドルになります。それに建設コスト等を加えると、1平方フィート当り3,000Sドル以上で販売しなければ採算が合いません。1,000平方フィートの物件とすると、最低300万Sドル以上になる計算です。

 

2.ダニアン・ガーデン新築時売出し価格
ダニアン・ガーデンの敷地は、歴史上有名な当地豪商の黄仲涵(Oei Tiong Ham、1924年没)の邸宅跡地(永代所有権)です。それがめぐりめぐって、華人財閥ホンリョングループの所有となりましたが、諸般の事情で手放すことになり、たまたまセントーサで遊園地開発を検討していた旧後楽園スタヂアム関係会社が購入・開発することになりました。

 

同社の1990年当時の売り出し価格は、約600Sドル/平方フィートと、当時としてはかなり高めの値付けで、シンガポール人には当初不評でした。当時は乗用車価格が今ほど高くなかったため、MRT駅に近いことも利点とは評価されていませんでした。そこで、地下鉄駅の利便性を既に認識していた香港人に売り込むべく、弊社の香港法人が同地でのマーケティングを担当することになり、有力紙に全ページ広告を掲載。しかし当日、香港に大型台風が襲来、初日の反響は不振に終わりました。

 

もっとも1997年の香港中国返還を前にした海外不動産購入への関心は高く、特に駅前物件の価値を知っていた香港人の評判をすぐに呼びました。当初の購入者の約4分の1近くは香港人で、その後のシンガポール不動産購入ブームのさきがけとなりました。また、旧後楽園スタヂアム社(現東京ドーム社)のつてで購入した日系企業も少なくありませんでした。

 

3.いつまで続くか、一括売却フィーバー
下記グラフは、再開発目的の一括売却成約総額推移(暦年)です。2018年は、通年では2017年を上回ると予想されています。リーマン・ショックで弾けたバブルが、また膨らんできたと懸念する向きも少くないようです。

 

文=木村登志郎(パシフィック不動産株式会社CEO、シンガポール宅建士)

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.334(2018年6月1日発行)」に掲載されたものです。

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