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シンガポール不動産「耳寄り情報」

2018年3月28日

地価上昇とコンドミニアム 

1. 収まる気配の無い集合住宅一括売却(En Bloc Sale)
昨年半ば以降、主としてシンガポール国民の住宅購入意欲の回復とともに、デベロッパーも用地取得を急速に加速させています。その結果、既存のアパートやコンドミニアムの一括売却案件も急増し、本年2月にはシンガポールの高級アパートの草分けであるパールバンク・アパートメント(288戸)が大手デベロッパーのキャピタランドに7億2,800万Sドルで一括売却されました。

 

この物件は1970年代に建築された、シンガポール独立後の最初の好景気を象徴するユニークなデザインの民間集合住宅であり、国民の憧れの的でした。現在に当てはめれば、MRTオーチャード駅上のオーチャード・レジデンスのような存在でした。オートラムパーク駅が、現在建設中のMRTトムソン・イーストコースト線の主要ターミナルになることを予測しての売買成立だと推測されます。その余波で、近隣のピープルズパーク・コンプレックスやピープルズパーク・センターの一括売却の動きなども浮上してきました。

 

2. 本年3月・4月の一括売却入札主要案件
これからも、多くの入札案件が続きます。
3月
Pacific Mansion (リバーバレー地区)
China Town Plaza
Goodluck Garden
Makeway View (ニュートン地区)
Eunos Mansion
Katong Park Towers
Pomex Court
4月
Windy Heights
Tulip Garden (ファラー・ロード地区)
The Estoril (ホランド・ロード地区)

 

3. 一括売却の急増による影響

① 現在の住民の転居に伴い、家賃相場が急騰する
② 再開発物件が近い将来一挙に竣工すると、家賃相場は急落しうる
③ 地価高騰にともない、新築物件のユニット面積はますます狭くなる

 

4. 下駄箱アパート
当地では“Shoe Box Apartment”とよく呼ばれていますが、面積の大変狭いアパートが乱造されることが懸念されています。政府や議会でもその是非が議論されていますが、実態が先行しています。

 

5. 日本人駐在員向け住居面積の推移
標準的な4人家族(夫婦、就学児童1名、未就学児童1名)
1980年代 3寝室タイプ 約1,600~2,000平方フィート
1990年代 3寝室タイプ 約1,200~1,500平方フィート
2000年代 3寝室タイプ 約1,200~1,300平方フィート
2010年代 3寝室タイプ 約1,000~1,300平方フィート

 

6. デベロッパー側の土地高騰対策
苦肉の策として、以下のような対策が取られるケースが増えています。
① テニスコートを省く。プールも小さく
② 駐車場台数の削減やエレベーター型駐車場の導入
③ シャワールームのみにして、バスタブを省く
④ メイド部屋省略や物置スペースの縮小。ダストシュートもユニット外に移設
⑤ 台所とリビングの間仕切りを撤去
⑥ 寝室とリビングの間仕切りの撤去や、スライド式への置き換え
⑦ 土地の所有権を取得するケースが減少、安価な99年定期借地の利用が増加

文=木村登志郎(パシフィック不動産株式会社CEO、シンガポール宅建士)

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.332(2018年4月1日発行)」に掲載されたものです。

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