2017年12月26日
ジューチャット
中華文化、KTV、ベトナム料理……混沌の中心部エリア
Masjid Khalidモスクを境とし、その南側は、龍や獅子などのレリーフが飾られたショップハウスが多く見られるようになり、ジューチャット・ロードは中華色が強くなる。(写真⑥)
歓楽街の雰囲気が漂う中華エリアに多いKTVでは、近年はベトナム系の女性が多く働き、一時は周囲にベトナム料理店が増えた。今は数を減らしたものの、人気店Long Phung(写真⑦、⑧)は健在だ。オーセンティックで美味しく、値段も安いため、昼食時、夕飯時には長い列ができる。メニューの品数は多いが、気分に合わせて何を注文してもハズレがない。


さらに南へ歩みを進めると、中華まんの店D’bunが現れる。シンプルなチャーシューまんやあんまんの他に、それだけでもおかずになるような美味しい具の入った中華まんが手頃な値段で買える。
プラナカン・シックな南エリア
プラナカン文化を色濃く残しているとされるジューチャット・ロードの南側には、2010年代に入り、おしゃれなカフェや雑貨店、バーなどが現れ出した。Cat Socratesは、エリアの草分け的存在で、ローカルデザイナーによる雑貨や、ポストカード、挿絵のかわいい本などセンスの良い品ぞろえが支持されている雑貨店。
プラナカン料理店が点在するジューチャット・ロードで、古くからの店は大人数向けの量と値段設定のところが多いなか、昔ながらのプラナカン料理をカフェ風にアレンジした、レトロモダンなSinpopo(写真⑨)なら少人数でも入りやすい。食事メニューはどれも良く考えられており、本格的。デザートも、パンダン・タルトなどローカルらしさを意識した品ぞろえだ。ドリンクも、ロンガン、カラマンシーなどローカルにおなじみの材料を使ったユニークなものを出している。
ジューチャット・ロードとイーストコースト・ロードの交差点を西に少し行ったところには、意匠を凝らした外観がひときわ目を引くRumah Bebe(写真⑩)がある。店名の由来であるBebe氏は、廃れ行くプラナカンのビーズ細工を習得し、後世に伝えるため、ここで教室を開いている。一階はショップになっており、雰囲気の良い店内ではプラナカン・スタイルの雑貨やプラナカン菓子などが売られている。
2㎞にも満たない長さながら、ジューチャット・ロードは、歩みを進めるにつれ、まったく異なった顔を見せる。訪れる人を、それぞれの表情を見逃さないように引き留めさせ、ゆっくりと、非日常を楽しみながら散策させる、実にチャーミングな通りだ。
ジューチャットのおすすめスポット
住んでみたい?! 居住用ショップハウスも見物
ジューチャット・ロードの脇道であるクーンセン・ロードは、居住用のプラナカン建築のテラスハウスが多く残る閑静な通りで、ジューチャット・ロードとは雰囲気が異なる。ここはなんと、50年代にはギャングのアジトもあったという驚きの過去を持つ。他にも、ジューチャット界隈では、ジューチャット・プレイス、テンべリング・ロードの一部などにもプラナカン建築が見られる。かつて界隈を闊歩していた人たちの生活に思いを馳せながら美しいプラナカン建築の間を歩くのも楽しいだろう。
この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.328(2018年1月1日発行)」に掲載されたものです。写真・取材: パーソン 珠美