似て非なる「チキンライス三つ巴」

海南Hainanese

チキンライス界のメジャーブランド

中国大陸の南、南シナ海の北部に位置し、温暖な気候でリゾートがあることから「中国のハワイ」と呼ばれる海南島。その島にある海南省からの移民が、チキンライスを生み出したとされる。当地では海南チキンライスの看板を掲げる店が多い。そんな中で逸群（イェットコン）は、昔ながらのチキンライスを提供し続けている1軒。「チキンライスも、店のたたずまいも、1940年の創業時のままです。シンガポール人は骨と皮付きチキンを好みますが、外国人の方は骨と皮なしを注文されますね」（フーン Foonさん）。チキンライスは黙々と一人で食べるイメージがあるが、同店では写真のようなハーフサイズチキンを注文して、大勢で楽しむ常連客が多い。

広東Cantonese

シンガポールでは珍しい、少数派のチキンライス

中国南部の広東省は、中国料理の中で最も国際的に普及しているといわれる広東料理発祥の地。しかし当地のチキンライスに関しては、意外にも少数派。海南式をアレンジしたのが広東風という説もある。「海南式と違って広東チキンライスと看板に掲げる店はごくまれ。多くの場合は単にチキンライスと名乗っています。そこで私は自分のルーツである広東を店名に入れました。海南式との違いはありますが、使う食材については企業秘密です」（政縁廣東鶏飯／チョウ・サンヘンChow Sand Hengさん）。見た目も海南式と似ている。一目見て広東か海南かを当てることができたら、あなたはかなりのチキンライス通といえるかも。

マラッカMalacca

チキンライスの原型は一口サイズのボール型

マレーシアの南部、マラッカはジョホールバルの北西約240キロメートルに位置する州。ジューシーな蒸し鶏と、ゴルフボールほどの大きさのチキンライスボールのコンビはマラッカの名物。「マラッカには中国・海南省出身の移民が多く、パンダンリーフなど地元の食材を香味料にご飯を炊き、独自のチキンライスを生み出しました。基本的に調理方法は海南式と同じです。実はこのボール型こそ、チキンライス本来の形。ボール型にするのに手間がかかるということで、お椀型が普及しました。当店では昔ながらのマラッカのチキンライスにこだわっています」（Resorts World Sentosa Malaysian Food Street／Chef de Cuisineアドルフ・タンAdolf Tanさん）。

あれもこれもチキンライス

今回紹介した蒸し鶏のチキンライスだけでなく、ご存じのとおりローストチキンライスや醤油ベースのソースをからめたSoya Sauce Chickenなどいろいろなバリエーションがある。また、チキンライスボールにもマラッカとは名乗らない海南チキンライスボール（Blk111, Lorong1, Toa Payoh／写真左）というテニスボールほどの大きさのものもある。さらに、タイ料理店に行けばカオマンガイ（Khao Man Gai）、ベトナム料理店でコムガー（Com Ga）といった多国籍のチキンライスも楽しめると思われる。いろいろなチキンライスの食べ歩きをしてはいかがだろう？