シンガポールのビジネス情報サイト AsiaX熱帯綺羅TOPシンガポールを代表するソウルフード「カヤトースト」

熱帯綺羅

2020年9月29日

シンガポールを代表するソウルフード「カヤトースト」

 シンガポールの朝食や午後の軽食として親しまれている「カヤトースト」。バターを塗ったトーストに甘くて香り豊かなカヤジャムをはさんで作るカヤトーストは、現地人だけでなく、多くの観光客を魅了してきました。最近は日本にも大手チェーンが進出するなど、カヤトーストはシンガポールのソウルフードの一つとして、国内のみならず世界に展開を広げています。
 
 2020年7月1日。東京・新宿のビジネス街のビルの一角に正式オープンしたのがシンガポールのカヤトースト大手専門店「Ya kun Kaya Toast(ヤクン・カヤトースト)」の店舗。看板商品はもちろん、カヤトーストとコンデンスミルク入りの甘いコーヒー「コピ」。シンガポールの朝食としておなじみのカヤトースト、温泉卵、コピの3点セットが490円(税抜き)〜楽しめます。シンガポールに在住経験のある日本人からも「シンガポールで食べたカヤトーストの味を思い出す」との喜びの声が聞こえてきます。
 

東京・新宿のビルに開業した「ヤクン・カヤトースト」の店舗
ヤクン・カヤトーストのカヤジャム

 

ココナッツが原料のカヤジャム

 カヤトーストの主役となるのが、カヤジャム。卵、ココナッツミルク、砂糖のほか、東南アジアの料理や菓子で幅広く使われるハーブで、その独特の甘い香りから「東洋のバニラ」と呼ばれている「パンダンリーフ」を主な原料としています。とろみが出るまで長時間じっくり煮詰めて作ります。
 
 カヤジャムは、大きく分けて茶色と緑色の2種類があります。茶色のカヤは、カラメルまたはブラウンシュガーで作られた海南(ハイナン)スタイルのカヤジャム。一方、マレーシアでも多く見られる緑色のカヤジャムはニョニャスタイルといわれています。ハイナンスタイルのカヤは砂糖の使用量が多いため一般に甘みが強く、ニョニャスタイルのカヤはパンダンリーフをたっぷり使用するため、パンダンのさわやかな香味が引き立つのが特徴です。
 
 炭火で焼いた薄めのトーストにバターとカヤジャムを挟むのがシンガポールの伝統的なスタイルですが、現在は、厚切りのもっちりしたトーストやセイロで蒸したパンに合わせたり、フレンチトーストやクラッカーに組み合わせたりなど、その楽しみ方も時代とともに広がりをみせています。ただ、醤油をたらした半熟卵に絡めながら、コピや紅茶と一緒に食べるスタイルは変わりません。
 

カヤトーストを生み出した海南の移民

 シンガポールの定番食となったカヤトースト。生みの親は、(南シナ海北部の島)海南からの移民で、彼らが英国船で働いていたときに出されたフルーツジャムのトーストをアレンジしたのがはじまりとされています。当時、フルーツジャムは高価だったため、東南アジアで入手しやすいココナッツやパンダンリーフを原料としたジャムに置き換えることでカヤトーストが誕生しました。20世紀前半には海南の移民によってカヤトーストを扱う店舗も開業。シンガポールやマレーシアの朝食・軽食の一品として定着していきました。2000年代に入ると、カヤトースト専門店が本格的にフランチャイズとして急拡大していきました。
 

広がるカヤトーストのチェーン店

Ya kun Kaya Toast

 このほど東京・新宿に進出した、ヤクン・カヤトーストは1944年から続くシンガポールのカヤトーストの老舗ブランドの代表。同店のカヤトーストは、生地にココアが練り込まれた薄茶色のパンをサクサクの歯ごたえに焼き上げたトーストに、まろやかなテイストのカヤジャムと大ぶりな薄切りバターが挟まっているのが特徴です。ジャムの甘味とバターの塩っぱさが心地よく口に広がり、おやつのような感覚で食べ進めることができます。ヤクン・カヤトーストは、現在、シンガポール国内に約70店舗と、世界10ヵ国で約120店舗を展開しています。
 

シンガポールのヤクン・カヤトーストのカヤトーストのセット
シンガポールのヤクン・カヤトーストの店舗

 

Killiney Kopitiam

 ヤクン・カヤトーストと並び、シンガポールのカヤトーストの老舗ブランドといわれているのが「Killiney Kopitiam(キリニー・コピティアム)」。1919年後半に「Kheng Hoe Heng」の店名で1号店を開業し、伝統的な炭火焼のトーストや、淹れたての温かいコピや紅茶で多くの人を惹きつけました。1993年に常連客の一人が同店を買収。店名をキリニー・コピティアムに変更し、多店舗展開を進めています。さわやかで口当たりが軽いのが、同店のカヤトーストの魅力。白トーストにたっぷりはさまった薄緑色のカヤジャムは、すっきりした風味で、甘すぎず、幅広い層に好まれそうです。
 

キリニー・コピティアムのカヤトーストのセット

 

キリニー・コピティアムの店舗
キリニー・コピティアムのカヤジャム

 

Toast Box

 2005年設立と後発組ながら、すでにシンガポール国内に70以上の店舗網を持つのが、大手外食チェーン「ブレッドトーク・グループ」の「Toast Box(トーストボックス)」。同じグループ運営のフードコートなど好立地に次々と出店し、一躍、大手チェーンとなりました。海外は、北京、香港、ジャカルタ、ジョホールバル、クアラルンプール、上海、台北にも店舗を構えています。トーストボックスのカヤトーストは、はちみつ入りの茶色のカヤジャムを使用。程よい甘みが角切りのしっとりとしたトーストとよく合います。
 

トーストボックスのカヤジャム
トーストボックスの店舗

 
 
 シンガポールで長く愛されてきたカヤトースト。作り手や店ごとに、少しずつ違った味が楽しめるのも人気の秘訣かもしれません。シンガポールの食文化を知るきっかけに、ローカル店などでいくつか食べ比べてみませんか。

おすすめ・関連記事

シンガポールのビジネス情報サイト AsiaX熱帯綺羅TOPシンガポールを代表するソウルフード「カヤトースト」