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熱帯綺羅

2017年1月1日

チャイナタウンの名所 「新加坡佛牙寺龍牙院」

サゴ・レーン「死の家」の歴史

見どころの多い佛牙寺ですが、その建設地には重い歴史があります。このエリアでは、佛牙寺が建設されるはるか前の19世紀から中華系の移民が移り住みチャイナタウンが形成されました。当時やって来た労働者の中には、貧しさのために地元に帰る資金がなく、そこで一生を終える人も多くいたそうです。寺に面したサゴ・レーン付近には、1960年代まで貧しい人達が最期を迎えるための「死の家」があったといいます。

 

佛牙寺の横には、サゴ・レーンの歴史を紹介する看板があり、こう記されています。「シンガポール中華系移民の多くは貧しく、狭い住居に大人数で暮らしていた。そこでは生活するのに十分なスペースさえなく、一人静かに死ぬ場所などは到底なかった。それに加え、『家中に死人が出ると残りの住人に不幸をもたらす』という迷信が信じられており、死の家が出現することとなった。(中略)気味悪がられながらも、死の家はチャイナタウンの社会においてきわめて重要な役割を担った」。

 

死の家が取り壊された後、その場所は長らく空き地だったといいます。チャイナタウン・ヘリテージ・センターの担当者は「こうした建物があった場所に、住居やオフィスを構えるのは縁起が悪いと思われたのかも知れません」と話しています。死の家で亡くなった人の慰霊は佛牙寺を建設した直接の目的ではないものの、建設中には慰霊のためのセレモニーも行われたそうです。

 

チャイナタウンと聞くと、観光スポットとしての面が注目されがちかもしれませんが、佛牙寺について知ることで、現在からは想像できないような歴史の1ページも垣間見ることができます。

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寺の横に立つ、サゴ・レーンの歴史を紹介する看板。日本語でも記載されている。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.316(2017年1月1日発行)」に掲載されたものです。 取材・写真:佐伯 英良

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