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熱帯綺羅

2016年8月1日

シンガポールで独自の進化をとげた にょろにょろスイーツ「チェンドル」

プラナカンが定着させた!? かき氷スタイル

発祥地のインドネシアでは、実はチェンドルは主にドリンクとして親しまれています。シンガポールのホーカーやデザート店でよく見かけるかき氷にチェンドルを乗せ、ココナッツミルク、茹で小豆、最後にグラマラッカ(ヤシの黒糖)をかける食べ方は、マレーシアのプラナカンが広めたスタイル。「Makansutra」ウェブサイト内にある『The history of Chendol』という記事によれば、1950年代シンガポールのマレーコミュニティの中心であるゲイランセライマーケットにチェンドルを出すホーカーがすでにあったとされています。
現在でも伝統的なスタイルのチェンドルが食べられると聞いてやってきたのがMRT南北線トアパヨ駅から徒歩7分のホーカーセンター。「Dove Desserts」と看板がかかげられた店頭にはいつも長蛇の列ができています。かき氷とチェンドルの上に、茹で小豆やグラマラッカをトッピングしたスイーツを勢いよくかきこむ会社員、椅子に座って氷が溶けるまでスプーンでかき混ぜながらお喋りしているご近所のお母さん。常夏のシンガポールの午後、涼をとるための日常の風景です。

 

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「Dove Desserts」の店主、ヘレン・ライさん。マラッカのジョンカーストリート沿いや、ペナンのジョージタウンの中心街にある老舗ホーカーを幾度となく訪ね歩き、レシピを再現するため試行錯誤したという。デザート好きが高じて約5年前、母親が経営していたホーカーをチェンドルなどのデザート専門店にリニューアル、一躍地元の人気店になった

お店の厨房を覗くと、チェンドルが大量に入った大きな容器が二つ、視界にとびこんできました。「一日に売る分だけを毎日手作りしているから、チェンドルがなくなったらその日はおしまいなの。工場で作られた既製品も悪くはないけれど、うちでは使わないわ」。そう話すのは店主のヘレン・ライさん。彼女の朝は厨房でパンダンリーフをジューサーにかけ、米粉などの材料と煮つめた後、漉し器でチェンドルを作ることから始まります。
今回、何軒かのチェンドル有名店を訪ねてみましたが、やはりマラッカやペナンの屋台仕込みのかき氷スタイルを出すお店がシンガポールでも人気のようでした。とはいえ、かつてラッフルズホテルにあったスイーツ店では、チェンドルとパンナコッタを組み合わせた型破りなスイーツを提供するなど、他文化を自己流にリメイクすることで知られるシンガポーリアンのこと。ほかにもインドネシアと同じドリンクスタイル、アイスクリームのチェンドル味、ドリアンをペースト状にしてチェンドルのトッピングにするのはこの国ならでは。アジアの国々に想いをはせ、インドネシアで生まれたにょろにょろスイーツ・チェンドルを午後のひと時にのんびり楽しんでみてはいかがでしょうか。

 

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パンダンリーフなどで色付けした材料を濾して水で冷やすとチェンドルのでき上がり。この濾し器はヘレンさんがマレーシアで入手したもの。
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MRT東西線ブーン・レイ駅に隣接するショッピングモール、ジュロンポイントにあるお店「Malaysia Boleh!」はマレーシアの人気屋台を再現した店構えが特徴的。ペナンで生まれ育ったマリーさんが故郷のレシピをそのまま再現し、人気を呼んでいる。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.307(2016年8月1日発行)」に掲載されたものです。 取材・写真:宮崎 千裕

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