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熱帯綺羅

2016年6月20日

知られざる第一次産業 シンガポールの観賞魚ビジネス

取引相手国によって扱う魚の種類も変化

「当施設で扱う鑑賞魚は200種類以上、全部で約2,000匹に上ります。その中でも一番人気は、鮮やかな黄色でおなじみのキイロハギ。淡水魚より飼育が難しいとされる海水魚の中でも初心者向けの観賞魚です。また、『ファインディング・ニモ』でニモのモデルとなったアネモネフィッシュや、同じくドリーで一躍有名になったナンヨウハギなども人気です」(ペイさん)。アネモネフィッシュと言っても実に多くの種類があり、特に頭が白いホワイトクラウンと呼ばれる種類はオスとメスのペアで約500Sドルという値がついています。

 

海水魚を飼育するのに最も大切なのは水質管理。その中でも一番気を遣うのは温度とPH値だそうで、数日に一度は水のサンプルをとり検査を行っています。また魚の種類によって性質が違うため、攻撃性の高い種類は一匹ずつ小分けにして飼育するなど、魚の生息環境を整えるために工夫がなされていました。

 

ただ、近年まではこのような小型の観賞魚が人気でしたが、ここ数年で中国が主な取引先となったことで売れ筋にも変化がありました。現在、中国には約150もの水族館が存在すると言われていますが、なかでもアマゾン川に生息するアロワナ科ピラルクーやサメなどの大型魚が人気で、この中国の消費者の趣向に合わせて、ペイさんの施設内にも大きな水槽がずいぶん増えたといいます。その水槽の中では、大きいもので2.5メートルもある鑑賞魚としてのサメやエイが悠々と泳いでいました。その中の一種、シノノメサカタザメは見た目がギターのようなことからギターフィッシュとも呼ばれています。「サメ」という名がついていますが、実はエイの一種で、飼育員がエサをやろうとすると近寄ってきて、手からエサを食べるほど人懐こい魚です。

 

近年は自然保護の観点から規制が多くなり、観賞魚ビジネスは縮小傾向にあると言われています。しかし、美しい色とりどりの魚が悠々と泳ぐ様子を眺めていると、日常のストレスから開放された気分になります。魚たちが私たちとは違う、ゆったりとした時間の流れで暮らしているのが伝わってくるからでしょうか。経営環境は決して楽ではないとは言われていますが、世界に誇れるシンガポールの第一次産業を官民一体となって保護し、今後も維持してほしいものです。

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お話をうかがったCoralfarm Aquaristic Pte Ltd代表のギルバート・ペイ氏。
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小さな観賞魚は袋詰めにされて出荷される。
Coralfarm Aquaristic Pte Ltd
http://www.coralfarm.com.sg/

 

Coralfarm Aquaristic Pte Ltd
http://www.coralfarm.com.sg/

 

60 Lim Chu Kang Lane 6F, Singapore 718843

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.304(2016年06月20日発行)」に掲載されたものです。
取材・写真:平野 かほる

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