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熱帯綺羅

2011年9月19日

ラブ・シードこと、サガの実を拾い集める愉しみ

相思相愛の木の話

「紅豆生南国、春来发几枝、愿君多采撷、此物最相思。」唐・王維

多くの人は、この実を「ラブ・シード(愛の実)」と親しみを込めて呼びます。少しラインが緩んだハートの形にも似ていることから、それをたくさん集めて小瓶にしまい、告白代わりに好きな人にプレゼントするのだそうです。100粒、時には1000粒集めると思いが叶うという、おまじない的な存在でもあるようです。

ラブ・シードと呼ばれる所以をひも解くうちに、一編の漢詩に出会いました。中国では「海紅豆」あるいは「相思樹」と呼ばれ、 この唐の時代の漢詩の中で登場したことからも、愛情を代弁する役割を担ってきたことに歴史を感じます。若き詩人の王維が、美しい女性と川辺を散策していた時、ふとこの南国からの木に出くわし、木の下に、きらきらと輝く紅色の豆がたくさん落ちているのを見つけました。彼女に 「この美しい豆をたくさん拾ってしまっておいて下さい。私も、たくさん拾っておきましょう。この豆は昔から相思相愛のしるしと言い伝えられてきたのですから」と、王維が愛を告白した情景が伺い知れるようです。

シンガポール島内では、ボタニックガーデンやフォートカニングパーク、セント・アンドリュース教会、バルモラル・ロード、ニコルハイウェイ沿い、イーストコーストパークなどで、サガの木を見かける事ができます。また、チャンギ空港第三ターミナルには、巨大なサガの実の彫刻が置かれ、シンガポールを訪れる人の幸運を願うシンボルとして親しまれています。

文= 桑島千春、写真=Eugene Chan

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.197(2011年09月19日発行)」に掲載されたものです。

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