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熱帯綺羅

2011年8月22日

公団住宅HDBの将来を占う「The Pinnacle@Duxton」

最近閉鎖されたタンジョン・パガー鉄道駅の近くに、50階建ての瀟洒なマンション7棟が完成したのは2年前のこと。これが政府公団住宅HDBの建物であると知って驚いた人も多かったようです。HDBというと郊外のタンピネスやアンモキオにびっしりと建てられた、人工的な高層住宅群を思い出します。

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高層ビルとはいえ、七棟が肩を組んでいるような外観はフレンドリー。独立記念日前後には国旗を掲げている家も多く、政府公団住宅らしい

しかしピナクル@ダクストン(The Pinnacle@Duxton)はそんな従来の公団住宅HDBのイメージを覆す、個性的でかつモダンな外観を誇っています。それもそのはず、この建物は国内外の建築家による200ものデザインから選ばれた設計図を基に建設されたのです。26階と50階にはスカイ・ブリッジとスカイ・ガーデンが造られ、7棟の建物を繋いでおり、建物にアクセントを添えています。この12本の橋が世界一長いスカイ・ガーデンの設置を可能にしました。

 

50階から望むパノラマはピナクルの名前に相応しい、壮大なスケールです。シェントンウエイのビル群とその向こうにマリーナ・ベイ、そして数多くの船が浮かぶマラッカ海峡。反対側はシンガポール全島を見渡します。

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[1] シンガポールを俯瞰する屋上からの眺め。ビジターの入場料は$5
[2] 雲の中に吸い込まれそうなスカイガーデン
[3] プレイグラウンドや保育園がいくつもあり、さすがはファミリー志向のHDB

 

HDB創立50周年記念すべき建物

政府公団住宅開発局(HDB:The Housing And Development Board)は1960年に創設されました。それまで住環境が整備されていなかったため、政府が全国民に便利で快適、かつ安価な住宅を提供するために始めた一大プロジェクトでした。

シンプルながら水道、電気やガスなどの設備が整った住宅です。最初の3年で2万1,000戸、5年で5万4,000戸、とHDBの建設は急ピッチで進められました。

昨年50周年を迎えたHDB。現在シンガポーリアンの80%以上がこの公団住宅に住んでおり、そのうち95%が所有しています。この数字は持ち家率60%にとどまる日本と比較してもいかに高い数字であるかわかるでしょう。それは政府がコストを抑えて手ごろな値段で販売し、かつ中央積立基金(CPF)というシステムによって、定収入のある人ならほとんどが購入できるようにしたからです。

HDBはまた、1989年にエスニック・インテグレーション・ポリシーの政策を導入し、1棟の中に中国系、マレー系、インド系、その他の人種が入居する割合を定め、特定の人種がひとつの棟に集まらないように配慮しました。ワン・ピープル、ワン・ネーションと謳われているように、シンガポール政府は多民族がバランスよく交じり合って暮らすよう奨励してきたわけです。

またHDBが建てられている地域には保育園や幼稚園、各種学校、スポーツや趣味の教室、イベントが行われるコミュニティー・センター、生鮮食品の市場・ウエット・マーケットやスーパーマーケット、なによりもシンガポーリアンの台所として欠かせないフードコートが必ず設置されています。

こうしてシンガポーリアンの家族生活の基盤となっているHDBですが、最初の2棟が建設されたのは、現在ピナクルの建っている場所でした。1963年のことです。ここはHDBの歴史が最初のページを記したランドマークなのです。

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