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熱帯綺羅

2012年9月3日

幻の紅毛橋 Ang Mo Kio

 

川とともに消滅した橋

Screen Shot 2015-07-28 at 4.47.49 pm紅毛橋という名前にはもうひとつの由来があります。この辺りの開発に従事し、多くの橋の建設も手がけた、英国人技術者のトムソン(John Turnbull Thomson)氏が赤毛だったというもの。トムソンの名前は実際、この付近の道路や学校の名前などに数多く使われています。

 

貿易港として発展したシンガポールでは、川が水上交通や物資の運搬に重要な役目を果たしており、昔はカラン川もそのひとつでした。そこに紅毛橋を含めて9つの橋が架かっていましたが、カラン川の支流の多くが埋め立てられたときに壊されたのでしょう。貯水池に最も近かったと思われる橋も例外ではありませんでした。もしかしたら、ロウアー・ピアース貯水池に沈んでいるかもしれません。

 

庶民の憩いの場となっている貯水池周辺には今も、サルやイノシシまで生息する熱帯雨林が残っています。緑の木立の合間から貯水池を眺めると、池の果てに一本だけ残された橋が見えます。その上に広がる真っ青な空――。ウィンザー婦人は天国で3人のお子さんと再会し、手をつないで橋を見下ろしているかもしれません。空を映す貯水池に再び目を落とすと、厳しい自然と闘いながら熱帯雨林を開拓し、川で物を運搬して貿易を営み、街を築いてきた人々の努力と生命の営みが胸に迫ってきます。

 

16 Old Upper Thomson Rd singapore 576214

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.219(2012年09月03日発行)」に掲載されたものです。
文= セガラン郷子
写真=セガラン郷子

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