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熱帯綺羅

2013年3月4日

財閥タイガーバーム総裁夫人、胡暁子さんの栄華を偲ぶ遺品

 

次世代の日本人女性へ贈る「国際人のパスポート」

Screen Shot 2015-07-28 at 3.53.33 pm額に入った写真や大小のアルバムも数多く、若き日の暁子さんのポートレートはどれも素敵で見とれてしまいます。チャイナドレス姿のものが多く、中にはマキシムで食事をした時の記念写真や、米国のジミー・カーター元大統領夫人ロザリン・カーター氏と一緒のスナップもありました。世界各国の要人と交流があったという胡一族の華やかな暮らしぶりの一端が見られます。いったい暁子さんは戦後、どのような経緯でシンガポールに渡って来たのでしょうか。

 

彼女のオフィシャルブログによると、前のご主人(香港人)と離婚された後、シンガポールにいた友人に勧められて横浜から乗ったフランス客船の中で、胡一虎氏と運命的な出会いをされたそうです。初めてのデートでご家族を前にプロポーズされた、というエピソードもご自身が語っています。「その頃の日本人女性は世界一の花嫁候補と呼ばれていました」と暁子さん。「でも今の日本女性は心の美しさを忘れています」と苦言もはっきりおっしゃっています。

 

日本人の国際的な地位が向上しないことを憂えて、40年にわたり世界の中の日本をテーマにご自身の考えを語ってこられました。それは著書『国際人のパスポート』にもつづられていますし、さらに『晴れもよし、雨もまたよし』、『日本人が知らない「日本の姿」』も上梓されています。DVD『日本人の意識改革』は、日本を海外から見つめ続けてきた故人の洞察力の賜物でしょう。

 

胡一族の“ファーストレディー”として財閥を支えながら、数十の会社を経営し、シンガポール赤十字社副総裁などを務め、暁子さんは東南アジアと日本の架け橋として相互理解を深めてきました。その功績が認められ、1989年には日本より紫綬褒章を受賞、その後も多くの勲章を授けられています。

 

そんな輝かしい経歴を持ったビジネスウーマンでしたが、84歳で亡くなられる直前まで女性らしい思いやりを持ち続けていたと言われます。講演やブログの中ではチャーミングな笑顔で国際結婚について、あるいはパートナーと良い関係を築く秘訣についてユーモアたっぷりに語っています。

 

倉庫の中の遺品を改めて見渡すと、持ち主を失った物の数々が静かに語りかけてくるような気がしました。「相手をたて、自分もたつ」。「やさしいいたわりの心がないと愛は育ちません」。暁子さんが後につづく日本人女性に贈った数々の言葉が響いてくるようです。

 

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.228(2013年03月04日発行)」に掲載されたものです。
文= セガラン郷子
写真=石橋雪江

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