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熱帯綺羅

2014年4月21日

時代を受け入れて1世紀。エメラルドヒルの佇まい

 

優雅なプラナカンの暮らしは、ピントゥ・パガーの向こうに

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間口が狭く、奥行きの長いテラスハウス。エメラルドヒルのテラスハウスは、大きいもので3階建て、約550平方メートルも床面積があります。やや閉鎖的だったプラナカンの豊かな暮らしは、実は家の中にありました。西洋の調度品やじゅうたんなどをふんだんにしつらえ、裕福なニョニャ(プラナカンの女性)たちは、ダイヤモンドに金細工、手の込んだサロンクバヤを身にまとい、ゴシップ談義や刺繍裁縫に耽る優雅な生活を送っていたといいます。
その様子が良くわかるのが、シンガポール人作家のステラ・コン原作の『Emily of Emerald Hill』という芝居。裕福なプラナカン家族の女主人エミリーが主人公の一人芝居で、1984年の初演以来7ヵ国17都市で上演されています。孤児となり不幸な少女時代を送ったエミリーは、エメラルドヒルのガン家の後妻として嫁ぎ、大邸宅で華やかな生活を送ります。その一方で、4人の子供が巣立つに従い孤独を増す姿が浮き彫りに。戦前の女性が生きた、限られた世界をも垣間見られます。ステラ自身も、エメラルドヒルに暮らしたプラナカン名家の血筋で、オベロンと呼ばれた大きなバンガローに暮らした祖母のイメージをエミリーに映したといいます。

 

 

エメラルドヒルは、繁華街の至近にありながら静かで快適な住環境があり、先代からテラスハウスを引き継いで暮らす家族のほか、外国人にも人気です。
この地の住人であるリーさんは、現在自宅テラスハウスのインテリアを大改装中で、日本製のウォシュレットからエレベーターまでを設置しつつ、祖先の愛した家の外観は最大限忠実に補修する予定だそう。「更に100年、この歴史的遺産を子供たちへ伝えていけるように」。オーチャード・ロードのネオンを近くに見ながらも夕暮れが似合うどこか懐かしい場所です。

 

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この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.255(2014年04月21日発行)」に掲載されたものです。
文= 桑島千春
写真=桑島千春

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