2014年5月19日
太陽の下で掘り出し物探し。スンガイ・ロード「泥棒市場」
市場の歴史―盗品からヴィンテージへ
1930年代にロチョー川沿いで小さな商売拠点として始まったこの市場。昔は盗品が売られていた事から、「泥棒市場」という愛称がつきました。第2次大戦中の日本統治下時代には、多くの人が安価な日用品を買い求めに訪れてにぎわったとか。その後、中古品やヴィンテージと呼べる骨董品なども売られるようになり、大人気のフリーマーケットへと成長を遂げます。
その後都市化の波が大きく進んだ1970年代、市場を形成していた露店の多くが政府の施設内に移転し、市場は次第に衰退していきました。一方で、80年代に入ると、どこからともなく露店がかつての場所に戻り始め市場が再開。その後も周辺地域の開発によって、幾度となく存亡の危機に見舞われましたが、時が経つと必ず同じ場所に戻ってきては再開し、今なおその場所で続いています。
近年の大きな変化は2011年7月、MRTの新駅工事でエリアが半分に縮小したこと。露店のサイズは1平方メートルに制限され、店の数も大幅に減少。以前は400以上の店で賑わっていた市場も、現在は約280店程になってしまいました。
先の見えない市場の行方
駅が完成する2017年以降のスンガイ市場の将来は、現時点では知らされておらず、歴史ある市場の存続が危ぶまれています。中古レコード屋のコウさんは、政府がどこか移転先を探してくれるだろうと楽観的に話しながらも、「皆ここが大好きなんだ。もし無くなったら本当に悲しいよ」と寂しそうに言います。
常に未来を追うシンガポールの中でも、いまだ混沌とした香りが漂うスンガイ泥棒市場。すぐ隣で急速に進む開発工事を背に、強い日差しの下でにぎわう市場を歩いていると、まるでシンガポールの歴史の移り変わりを見ているようです。
この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.257(2014年05月19日発行)」に掲載されたものです。
文= 船崎 ゆう子
写真=船崎 ゆう子・佐藤 邦寛