2015年1月1日
シンガポール現代文学を育む地元出版社とブックストア
英米文学やロシア文学といった外国文学に比べ、「シンガポール文学」の存在にピンとくる人は少ないかもしれません。地元作家の支援も行うシンガポール紀伊國屋書店の店長で業界31年の経験を持つケニー・チャンさんは、シンガポール文学のうち「以前から人気があるのが詩集、一方でフィクションやノンフィクションの文学や児童書も地元作家のものがここ数年で増えています。地元の出版社が発行する新刊の数も増加傾向です」と言います。
初めて出版されたシンガポール文学は詩集
建国前の英国植民地時代はイギリスの文学の影響が大きく、シンガポール人の著書としては1830年代にE.S.エリオットにならった詩集をロンドンで発行した華人の記録があります。1965年の建国前後は、社会性の強い詩や散文などを発表する作家が増えました。また、当時、地元出版社として地位を確立し知られたのが、同名のイギリス人が創業したドナルド・ムーア社(1947〜76年)で、詩集や政治家の半生紀、舞台芸術の本などを出版しました。
1980年代になると、フィクションや舞台の脚本を書く作家がますます増え、英語と中国語を中心に現代のシンガポール文学の基礎ができました。また、1986年から開催されているシンガポールライターズフェスティバルでは、年々海外からの作家との交流やワークショップが充実し、作家の底辺をひろげるのに貢献したといえるでしょう。
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