2020年5月15日
【特集】Chugai Pharmabody Research Pte. Ltd.
企業にとって「人材」はかけがえのない宝。成長を続けている企業には、人材に関わる取り組みにこだわりがあるはず。ここでは、独自の方法で人材を活用している企業にお話を伺い、その秘訣を紹介します!
【会社情報】Chugai Pharmabody Research Pte. Ltd.(CPR)
2012年7月に設立された中外製薬株式会社の100% 子会社である研究所。中外製薬が開発した独自の抗体エンジニアリング技術をベースとした革新的な医薬品開発を目的として設立された。現在は中外製薬で開発された技術に留まらず、自社での技術開発にも着手している。従業員数は約120名。9ヵ国の従業員が働く多様性に富む研究所でシンガポール発の革新的医薬品の創出に向け、日夜研究に取り組んでいる。会長は A*STAR(科学技術研究庁)の Chief Scientist である Sr. David Lane、CEOは抗体医薬品関連の世界的研究者である井川智之氏が務める。
Administration Head:福原 有吾氏
東京都出身。1999年に中外製薬株式会社にOTC部門の営業担当者として入社後、海外営業部門、4年間のドイツ駐在などを経て 2016年末より現職。人事・経理・購買・総務・広報・コンプライアンスを管轄。どんな状況であっても情熱をもって何事にも取り組んでいく事を心がけている。趣味は日本の家族とのビデオ電話。
現実に向き合うことから始まった
「研究所の仕事は、ゼロから何かを作り出す仕事なので、どれだけ働きやすい環境を提供し、効率的に成果を生み出してもらうかが一番大事」と語る福原氏。ほぼ同時期に着任したCEO井川氏と共に、お互いの違いを認め合うような風土ができればという想いから、2017年にダイバーシティ&インクルージョンワークショップを実施した。その中で、全社員に「今の会社に足りなくて、今後みんなにとって働き甲斐のある会社、良い会社になっていくためには、何が必要か?」という質問をした。意外にも、社員から最も多く挙がったキーワードは、「Trust(信頼)」だった。人事を管轄する立場の福原氏としては、正直耳の痛い結果だった。しかし、このワークショップの結果から、自身の活動に対する基本方針を見つけ、逃げずに現実に向き合うことを決めた。以降、「積極的にマネジメントチームから社員に信頼を表す取り組みをしていこう」とマネージャー陣一丸となって取り組み、3年半かけて人事制度・福利厚生の見直しや対話を促すようなワークショップの企画など、さまざまな試みを実施してきた。
組織のリーダーの発信力
中でも印象的な取り組みが、井川氏が四半期に一度全社員の前でメッセージを発信するオールスタッフミーティングだ。会社としての目標、研究ユニット毎の目標、プロジェクトの進捗や年間の総括を全社員で共有する場である。常にこの船(組織)はどこに向かっているのか、キャプテン(CEO)は何を考え、これから先どのように進もうとしているのかを明確に発信しているため、「日系企業で働く社員の悩み」としてよく挙げられるような「先が見えない。マネジメントが何を考えているかわからない」という声は出ていない。また、「自分の仕事が認められていないのでは」という社員の声を耳にした際は、プロジェクトの進捗発表時に、マネージャーが研究に携わった社員一人ひとりの名前をすべて読み上げ、感謝の気持ちを表す取り組みをすぐに実行した。
「信頼して任せる」ことの大切さ
日本人ではなく、現地の社員を中心に組織を運営していくことがシンガポールのビジネス社会で生き残る術だとするならば、「社員を信頼して任せること。対話の機会を増やし、どんな小さなことでも認め、感謝の気持ちを伝えることが大切。在宅勤務やフレックス制度も、社員のことを信用していないと成功しない。信頼があるからこそ導入できる」と語る福原氏。対話の機会を持てば、現地社員一人ひとりに違った能力や個性がある事が見えてくる。現地の人材を相手を知る前から色眼鏡でみるのは、非常にもったいないことである。昨今の不安定な情勢だからこそ、今まで以上に社員と向き合い、対話を増やしてみてはいかがだろうか。これらの働きかけは、どの企業でもお金をかけずに今すぐできる取り組みであると思う。今回のインタビューを通して、「信頼して任せる」ことの重要性を改めて実感させていただいた。
森村 美咲(もりむら みさき)
Pasona Singapore Pte. Ltd.
General Manager / Sales & Marketing Division
株式会社パソナ入社後、派遣部門での法人営業、HRコンサルティング部門でソリューション提案営業を担当。2011年に来星し、採用・人事労務・アウトソーシングのサービスに従事。多くの日系企業からの人事にまつわるよろず相談に日々対応中。プライベートでは、5歳児の母として奮闘中。