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徹底解析 人事評価制度

2020年3月3日

徹底解析!『日系大手アパレル企業』の人事評価制度

 

キーワードは 「成長実感」。常に最先端のファッションが誕生し、多くのブランドが凌ぎを削り合うアパレル業界。
そんな中同社はグローバルに店舗を展開し、 誰からも愛される日本ブランドを確立してきた。
10年間でシンガポール内に30店舗弱を構え、人材の入れ替わりが激しいこの国において、どんな評価制度・人事制度を用いて拡大していったのか。
「人材の定着」というシンガポールで最も人事を悩ませるポイントを攻略し成長させてきた、同社 A氏が語った成功事例を紹介する。

 今回ご紹介させて頂く企業は、アジアのみならずグローバルで3,500店舗以上を運営し、世界で活躍する日系大手アパレル企業。
 同社は、常に新商品を出し続け、世界から愛され注目を集めている。難民への服の供給やペットボトルを服にアップサイクルするなど、サスティナビリティ活動にも非常に力を入れており、業界の最先端で「服のチカラ」を世界に届けている。
 

細分化され、綿密に具体化された評価制度

 「とにかく評価されるポイント、評価の基準を明確にする」ことが大切であると同社のA氏は語る。
 
 グローバルでビジネスをしていくには、日本で慣れ親しんだ評価制度とは違って、入社するローカル社員に対して「どんな行動が評価に値するか、そしてこの基準にアチーブしたら次のステップは何なのか」というポイントを細部まで具体的に示し、事前に説明した上で納得してもらうことが大事であることに気が付くことが必要だった。以前は「どうしたら次のステップに進めるのかがわからない」と声をあげ、やる気が削げている社員をみかけることもあり、日本人に対しての同じコミュニケーションではローカル社員はついてこないと実感したともいう。そこで同社は評価制度を見直し、各項目を細分化・定量的にして「成長実感」を味わえるものにした。
 
 また、半期に1回だった評価面談の機会も増やした。半期に1回振り返るだけではそのスタッフの「結果」しか見ることができず、その人は成長実感を味わえないのだ。「どんなポジションの社員でも毎月、必ず5分でも上司とプチ評価面談を実施する」ことが大切と語るA氏。毎月少しでも自分の進捗や現状を聞いてもらえ、「次のステップへ必要な働き方」を共有する。上司と部下の目線が常に同じだからこそ、人は成長を実感し、モチベーションを維持できるのだ。
 
 「もちろんその際のコミュニケーションの仕方は 9:1(部下:上司)ですよ」と笑顔でA氏は語る。自分の結果に対しての評価が社員にとって必ず納得できるものにすることこそが、同社の強みである。
 

経営者候補である新卒の定着に力を入れる

 同社では大きく分けて3つの採用がある。
 
 1. 本部採用のいわゆる中途採用
 2. 店舗のスタッフであるアルバイト採用
 3. ビジネスリーダー候補である新卒採用
 
 この3つの中で、特に新卒の総合職採用と教育に力を入れているという。NUSやNTU等有名大学でセミナーや説明会を積極的に行い、採用した大卒スタッフをどう働かせ、どう評価し、いかに長く働いてもらうかという点に非常に気を使っている。
 
 例えば、一般的な「店長」のポジションについては、短大卒・専門卒のアルバイトスタッフ上がりの店長候補に1店舗を任せ、本来のキャリアであれば稼げないような給与と責任を与え、定着を図っている。実際に、この経緯の店長はなかなか辞めないそうだ。
 
 では新卒についてはどうか?入社をした新卒社員には、まずシンガポールにある店舗のなかから、高難易度となる売り上げの高いキー店舗を任せるのだ。その後、本部の各部署やシンガポールだけではなくグローバルに配置してローテーションしていく。
 
 なぜそのような働かせ方をするのか?それはシンガポールの大卒者は、常に「もっと面白い仕事がしたい」「もっと自分で考えて会社を動かしたい」と想っているからだ。ここに気付けないで他のスタッフと一緒に働かせていると、まず定着しないとA氏は語る。コミュニケーションを取ってみると、大卒とそうでない人たちとでは考えている内容やスケールは大きく異なっているという。
 
 大卒のスタッフにはより大きな仕事やポジションを任せる。評価も店長に与えているようなシンプルなものでなく、少し複雑なものにする。経営の命運を握っているとまで考えているからこそ、大卒の定着にこだわっているのだ。
 
 「シンガポールに来たころはベンチャー感が会社にあり、大卒の子も喜んで残ってくれたが、規模が大きくなるにつれて工夫することが多くなった。課題は企業と共に変わり続ける。だから採用は面白い。今後も経営者、幹部候補になりうる中間層のスタッフをもっと教育し、増やしていきたい」とA氏は語っている。
 

担当者コメント「社員に成長実感を持たせる」

 海外において社員の評価の仕方、働かせ方は日本のそれと同一にしてはならない。彼らは彼らの働き方とやりがいを持っているからだ。
 その点に気を付けた上で、自身が成長をしている実感を社員に与えてあげることが評価者の役目だと考える。自分では気づかないような成長を上司が気付かせてあげ、「できなかったことができるようになっている」 その繰り返しの中で、人は「仕事が面白い」と感じるのだ。
 
【企業カルテ】
 ✔ 徹底的に細分化された社員が納得できる評価制度
 ✔ 月に1回社員の成長進捗を必ずマンツーマンで確認
 ✔ シンガポールの大卒者にはとにかく大きな仕事を任せ、飽きさせない
 


Reeracoen Singapore
Senior Recruiting Consultant
須長 翔一さん

1993年生まれ。神奈川県出身。東京の大学を卒業後、人材業界の企業へ就職。3年間働き、「もっと大きなフィールドで活躍したい、成長したい」という想いから、アジアを中心に人材サービスを行うNeo career groupへ転職。フィリピンで発展途上国の人材紹介を経験後、シンガポールへ異動する。日本人10人、ローカルスタッフ約20人と日々精進中。趣味はギターと歌。

 

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