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2010年8月2日

国際貢献の出来るグローバル人材の育成

Matsui Mfg. Singapore Pte. Ltd. Deputy General Manager 笹原 一樹 業種:産業機器メーカー(プラスチック製造業)

ビジネス環境の変化

弊社が、プラスチック製造業界の合理化機器メーカーとしてシンガポールに進出してから、今年で24年目となる。進出当時は家電の製造拠点として、多くのプラスチック部品が製造されていたと聞いているが、その当時と比べれば、今、我々を取り巻くビジネス環境は全く異なるものであろう。

 

多くの企業は、中国やベトナムなど他の国々に生産拠点を移し、精密部品メーカーなどがわずかに残っている状況である。その状況と昨年の不況の影響から、シンガポールにオフィスを構えるメリットとコストを天秤にかけ、我々の同業メーカーでも、域内のHQをタイなどの足元の市場ボリュームがある地域に移す企業も出て来ている。

シンガポールの価値

しかし、シンガポールの持つ利便性と人材のレベルには、まだまだ、他の東南アジア諸国と比較しても抜きん出た価値があると考えている。インフラ、チャンギ空港の持つハブ空港としての利便性は、ここで述べるまでもなく他に類を見ない。人材については、教育水準が高く、語学堪能、また、比較的早い時期に海外からの投資があったため、先進国のノウハウをしっかりと蓄積してきている強みがある。

 

そのようなアドバンテージを生かすために、実は、2008年にグローバルエンジニアという位置づけで2名のスタッフを雇用した。彼らの役割は、アジアだけではなく、世界各地にある顧客からの要望に応えるための、いわばレスキューチームである。プロジェクトの遂行、クレームの対応、代理店の教育、時には市場調査までこなす。シンガポーリアンはほとんどの国の入国についてビザを必要としない。加えて、シンガポールから世界の主要国へのアクセスは極めて良く、顧客が望めば、翌日にはその土地に向かう事も可能である。

 

更に、①日本語の習得②本社との人脈構築③日本のビジネス文化への理解を目的に、日本での研修を1年間実施した。それにより、グループ全体が抱えるグローバル案件に対する人繰り難を、日系・非日系のどの顧客に対してもシンガポール発で対応出来るようになった。

 

また、東南アジアにおける営業面での役割も変わってきている。足元の市場が縮小傾向にある一方、インドネシアやベトナムを中心に、近隣諸国の成長は加速度を増している。その流れを受け、従来はシンガポールからマレーシアとインドネシアをカバーしていたが、ベトナムの南部やフィリピンなどへも活動領域を広げた。すなわち、現地法人があるタイを除いて、ASEAN地域の営業とサービスをシンガポールからカバーするオペレーションに変えたのである。

 

特に、期待しているのは、ローカル市場へのアプローチである。現在、域内のローカル市場は成熟期を迎えつつあり、ここに対するアプローチに我々としての商機を見出している。彼らが望む先進的な技術や生産の効率化の知恵などは、前段でも触れたとおり、シンガポールでは既に実践され、蓄積されたノウハウとして根付いている。その知識を活かし、ソリューション営業を仕掛けることが出来る人材は、やはり、シンガポールをおいて東南アジアで他にはないと思える。

日系企業の役割

シンガポールでの企業の役割において、「経済活動を通しての社会貢献」という感覚が希薄に思える。つまり、急激な経済成長の過程の中で、働くという事がお金を稼ぐ目的のみになってはいないだろうか。

 

時には、顧客や社会に対して、献身的に奉仕することも大切である。日本には「おもてなし」というすばらしい文化があり、例えば、日本の一流旅館のサービスは、世界の5つ星ホテルのサービスと比べても優れていると思う。ビジネスライクに考えれば“Too Much”な部分もあるが、それが感動を生む事も事実である。

 

この「おもてなしの精神」を浸透させ、各国の合理性をミックスしながら培ったシンガポールの文化と融合させることで、真の意味での国際貢献が出来る新たなグローバル人材を創出していきたい。

 

企業における人材の育成は、社会を形成していく人間の教育であり、単にスキルを教えるだけには留まらない。しっかりとした理念やビジョンを持ち、それを社員に伝え共有し、より良い社会へと導いていくことが、その責任なのではなかろうか。そう考えた時、この国の可能性やポテンシャルを感じ、ワクワクしてくるのである。

 

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.172(2010年08月02日発行)」に掲載されたものです。

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