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2014年6月2日

言葉や常識の違いと人間力

DNP Singapore Pte. Ltd. Sales Manager 関谷 稔 業種:総合印刷業

私は2010年3月にシンガポールへ赴任し、初めの2年を現地主体のグループ会社であるTien Wah Pressに勤務しました。同社はジョホールバルにも工場があり、上製本や絵本、最近はゲームカードを製造し、主に海外へ輸出しています。2012年からはDNPシンガポールへ異動し、現在は広告・販売促進分野と包装材、そして出版物を担当しています。

〈言葉の違い〉

赴任前に英語研修がありましたが、現実は全く違っていました。同僚の言葉が聞き取れず、当初は中国語のように聞こえました。いわゆるシングリッシュです。更にIT部門のインド人の英語もわかりませんでした。先日4ヵ国を結ぶ会議に参加をしましたが、各国に訛りがあり、改めて英語は1つではないと気が付きました。しかし、最近アメリカ英語が不安になり、英会話学校に通っています。

〈常識の違い〉

仕事では日本との常識の違いに困りました。指示したつもりが、指示と違う結果に何度もなりました。日本的な指示をし、明確な指示を怠っていました。当時は現地の事情が分りませんでしたが、1年が過ぎた頃から意思疎通ができるようになりました。逆に事情が分かるにつれ、日本との調整に苦労をしました。また、現地社員の転職があり、何度か振り出しに戻ることもありました。

色調の違いにも悩みました。タイの鍋料理を撮影したのですが、当初ことごとくNGになりました。得意先は煮込むと食材の色が変わり、色鮮やかではなく嫌だというのです。しかし、バンコクへ行き他のメニューを見て納得しました。どこも生のままで撮影されていたからです。

部門の責任範囲が厳格な事も違っていました。日本は部門を越えて問題解決をしますが、現地ではそうは行きませんでした。新人の当時現場で叩き込まれ、工場から信頼されることが営業の第一歩でしたが、こちらでは営業が現場に入る事はまれです。ただ、現場の職人気質は万国共通、仕事を通じて信頼関係が築けました。海外駐在員は言葉のほかに現地の常識、宗教、人種や異文化を理解した上で、問題を解決する能力が求められます。また、現場にこそ事の本質があることも改めて勉強させられました。

〈人間力〉

10年前に海外工場の閉鎖を現場で経験しました。当時評判の良かった得意先を訪ね、どこに違いがあるか観察しました。訪問をして気付いたことが1つあります。トップの方に奥深い人間性があり、現地社員から信頼をされていた事です。国は変わっても最後は人間力なのだと自身の力不足を反省しました。現在はボランティアとして「日本語を話す会」で現地の方と交流をしています。

 

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.258(2014年06月02日発行)」に掲載されたものです。

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