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社説「島伝い」

2019年4月24日

アイデンティティを作るもの

 1819年1月29日にスタンフォード・ラッフルズ卿がシンガポール本島に上陸して今年でちょうど200年。ラッフルズ卿による自由貿易港の建設は、シンガポールの歴史の中で大きな転換点となりました。首相府内の200周年事務局は、節目の年を迎えることをきっかけにシンガポールの歴史について国民がより関心を持つようにと、イベントを開催したり、ウェブサイト(www.bicentennial.sg)やSNSでの情報発信に取り組んでいます。

 

 さる2月4日には、春節を前にリー・シェンロン首相のメッセージが発表されましたが、その中でもラッフルズ上陸200周年のことが触れられていました。1819年以降、中華系の人々がマラッカなど近隣の都市だけでなく遠く中国本土からも多数移住してきて、様々な苦労を重ねながら作ってきたものが、代々受け継がれて今日のシンガポールの中華アイデンティティの形になったこと、マレー系やインド系、その他さまざまな国や地域からやって来た人々とも調和を図りながら、シンガポール独自の中華系コミュニティが形成されてきたことなどが語られました。リー首相はまた、アイデンティティというものは伝統に似て変化するものであり、これから新たな世代の人々や移民がもたらすものによって進化し続けるだろうとする一方、新たにコミュニティに加わる人々には、シンガポールにとって新しいものをもたらすだけでなく、時間と共にシンガポールの地域性に合わせる部分も持ち、シンガポールならではの文化的習慣を尊重することを期待したい、それがシンガポールの中華系コミュニティの活力維持につながり、シンガポールがオープンで活力に満ちた、困難にも負けない国であり続けるための道だ、と述べていました。多民族・多文化の融合を図り、調和を保つことに長年力を入れてきたシンガポールにとって、これまでに作られてきたアイデンティティがいかに大きな財産になっているかを、リー首相のメッセージから感じました。

 

 メッセージは主に中華系コミュニティに向けたものではありましたが、そのまま企業についてもあてはまるのではないでしょうか。企業の中にも創業から時間をかけてさまざまな人によって作られていく企業文化やアイデンティティが存在します。それらもまた、新たに人が加わったり、企業の中にいるメンバーがステップアップしていくことなどで変化や進化を遂げるものでしょう。良い形に変化させ、良い方向に進化し続けるためにはどうすれば良いのか、この国の歴史や、歴代の首相をはじめリーダー達、そしてそこに関わるチームの人達が実践してきたことの中に、学べることがありそうです。                 

(千住)

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.343(2019年3月1日発行)」に掲載されたものです。

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