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社説「島伝い」

2019年4月25日

求められる柔軟性

 就労ビザの発給基準厳格化の流れについては当欄でも度々取り上げていますが、もはや外国籍企業の現地法人マネージングダイレクターであっても、就労ビザの申請が却下されたと聞くことが珍しくなくなりました。また、採用においてシンガポール人に公正でなく育成にも消極的とみなされた企業は「ウォッチリスト」に掲載されますが、日系企業がリスト入りするケースも増え続けているようです。リストに載ると就労ビザの審査に数ヵ月かかるほか、人材開発省(MOM)から指導が入り、改善策を提出するよう求められます。業務上の理由で外国人の戦力が一定数必要な企業にとっては、なかなか頭の痛い状況です。

 

 人員が計画通りに配置できないことが増えると、オフィスの利用にもより柔軟性が求められるようになります。例えば、シンガポールにオフィスを構えている会社で駐在員の数が減った結果、オフィスの規模縮小を検討することになったとします。賃貸オフィスは2年契約が一般的ですが、賃貸住宅によくみられるような特別条項(外国人テナントが急遽帰国や他国へ転勤となった場合に一定条件の下でペナルティなしの中途解約を認める)が入っていない場合、契約期間の途中で解約すると、残りの期間の賃料もペナルティとして支払わなければならないことがあります。そんな場合にも柔軟な対応が可能なのがレンタルオフィスやシェアオフィス。以前は、レンタルオフィスといえば、起業時に借りる机一つの小さなスペース、といったイメージでしたが、最近では10名程度収容可能なレンタルオフィスもあります。ニーズの増加を受
けて、レンタルオフィスやシェアオフィスの運営側にも不動産関係だけでなく異業種からも参入し始めています。

 

 レンタルオフィスやシェアオフィスは、ビジネス環境の変化によって引き起こされたニーズの変化にフィットし、現在伸びているビジネスの一例ですが、同様のケースを今後さまざまな業種で作り出すには、環境の変化やそれに伴うニーズの変化をいち早く捉えて、柔軟に応えられるサービスを提供できなければなりません。ただ、どのようなサービスが新たなニーズに応えられるかがわかっても、自社だけではサービスを提供できない場合もあるでしょう。そんな時は必要な専門知識や技術力を持っている会社や人材を探して、コラボレーションするのも一つの方法です。今の時代は大小を問わずほぼすべての企業がインターネットで情報発信しており、手掛かりはたくさんあるはず。どれだけ柔軟に組み合わせを考えられるかが、変化の速い今の時代に対応し、生き残り続けるための鍵の一つになるようです。(千住)

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.345(2019年5月1日発行)」に掲載されたものです。

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