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社説「島伝い」

2016年12月5日

就労許可基準厳格化への対応

外国人労働者向け就労許可であるエンプロイメント・パス(EP)やSパスの認可基準はここ5年あまりで相当厳しくなりましたが、来年1月からは一層厳しくなり、EPの月額給与基準が現行の3,300Sドル以上から3,600Sドル以上に改定されます。7月に発表されて以降、「今まで以上に大変厳しい内容になる」との見解が多かったこともあり、特にシンガポール人や永住権(PR)保持者以外の外国人社員を多く抱える企業にとっては大きな懸念材料になっています。

 

人材開発省(MOM)が提供するオンラインツール”Self Assessment for Employment/SPass”では、生年月日や国籍、出身大学、専攻、経験年数、月額給与などの情報を入力すると、EPもしくはSパス取得の可能性について確認できます。上記の情報で唯一可変なのは月額給与ですが、来年1月以降の申請予定で確認すると、現在のパスを更新できる月額給与が実際の額を大幅に上回る場合があり、企業・社員双方の懸念に拍車をかけているようです。

 

ただしMOMのサイト上にも記載があるように、オンラインツールの診断結果はあくまでも参考情報。実際には、業界や雇用主である企業、個人の持つスキルセットなどの諸条件によっても異なるとされており、一概に「〇歳代なら月額給与が〇〇Sドル以上でなければEPは取得できない」と断言できる訳ではありません。実際に申請してみなければわからない、というのが実情です。

 

ただ、就労許可の基準厳格化が一段と進むことだけは間違いありません。例えば外国人社員を積極的に採用してきた理由が、顧客の大半を外国人や外国籍企業が占めることであった場合、シンガポール人で外国語に堪能な人材や留学経験者を求める場合が従来は多かったのではないでしょうか。しかしこれからは、未開拓だった顧客層へのアプローチにより力を入れたり、提供する製品やサービスの刷新を図るなど、人材以外の部分でより大胆な施策が必要なのかもしれません。自分達に合った方法で、シンガポールで生き残っていけるビジネスへと進化する良いチャンスにしたいものです。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.315(2016年12月5日発行)」に掲載されたものです。

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