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社説「島伝い」

2007年2月12日

チャイニーズ・ニューイヤー

街では、旧正月(チャイニーズ・ニューイヤー)を1週間後に控え、賑わいを見せてきています。今回は、この旧正月について触れてみたいと思います。

 
日本では西暦(グレゴリオ暦)の1月1日が「元旦(正月)」として定着していますが、中国、台湾や韓国では旧暦(日本では天保暦)の1月1日(西暦の1月~2月頃)を「春節」(旧正月)として一年で最大のイベントとしています。今年は2月18日・19日で、特に「金豚年」にあたるとされており、とてもめでたい年とされています。この「金豚年」に生まれた子供は財を成し、幸せになれるという俗説もあります。日本では「猪年」ですが、中国では「豚年」。「豚」は日本でこそイメージはあまりよくありませんが、中国では丸々とした様子から「福」を感じさせる動物です。

 
では、この「金豚年」とは?「金」は、風水の五行に準じています。五行とは万物を木・火・土・金・水の5種類に分けること。「年」にも五行が当てはめられていて、毎年順番にめぐってきます。「金」はまた、中国で古来より高貴を象徴する色です。今年はこの「豚年」と「金」が60年ぶりに巡り合う、とても縁起のよい年と言われています。

 
中国文化に深く根ざしたシンガポールの旧正月を、キーワードで紐解いてみましょう。

大晦日、そして元旦
大晦日の晩は家族の絆を確かめるために一家が集まって夕食をとります。家の中も外も飾り物で彩られ、天井からは爆竹を型どった「火包」、猫柳には紅包(アンパオ)が幾つも吊るされます。 元旦になると「恭喜発財」(コンシーファーチャイ、さしずめ「商売繁盛」という感じでしょうか)、「新年快楽」(シンネンクワイラー)などと新年のあいさつをします。

 

春聯
大晦日には、「春聯」(チュンリェン)と呼ばれる赤い紙を家の玄関の左右に分けて貼ります。宋代に始まったといわれる春聯はめでたい一対の句で「歳々平安日 年々如意春(年ごとに平安な日々を迎え、毎年が春のよう)」といった文句がポピュラーです。

 

逆さまの「福」
旧正月には家々のドアや壁に赤地に黄色文字で「福」と書かれた紙が逆さま(倒)に貼られているのを見かけます。中国語で「倒」と到着の「到」の発音が同じなので、福を逆さまにすると「福倒了=福到了」→「福が到着する」となるわけです。

 

獅子舞
日本と比べると随分と派手な当地の獅子舞、獅子を彩る金、銀や赤などの色は厄除けの意味があるそうです。唐代に始まり、日本に伝わったとされています。

 

アンパオ
年長者は子供や独身の者にお年玉袋(「紅包」;ホンパオあるいはアンパオ)を渡します。その中には新しい紙幣が遇数枚入っています(金額も偶数)。金額は親しさの度合いにもよりますが、ちょっと尋ねてきただけの人でも2ドルくらいもらえることもあるそうです。

 

爆竹
華人社会では、慶事に幸福を祈願し、悪や邪気を追い払う意味で爆竹を鳴らす習慣があります。シンガポールでは爆竹の使用は禁止されているため「爆竹のない年越しは寂しい」と、マレーシアにわざわざ「年越し爆竹ツアー」へ出かける人もいるそうです。

 

マンダリン・オレンジ
この時期は中国潮州産の蜜柑(みかん)が売り出されます。「柑」は「金」と同じ発音で縁起の良いものとして好まれます。また、オレンジは中国語で「吉子」=吉を運んでくるラッキーな果物とされます。お正月に他家を訪問する時みかんを偶数個持っていきます。またそのお宅からみかんを偶数個もらって持ち帰ります。

 

 

魚生(ユーシェン)
旧正月のメニューとして有名なのは、「魚生」という人参、大根、落花生、そして白身魚の刺身が入ったシーフード・サラダです。中国本土ではあまり馴染みのない料理のようで、発祥はクアラルンプールの広東系華人社会だと言う説もあります。 ユニークなのはその食べ方。食卓に着いた全員が椅子から立ち上がって、箸で大皿に盛られた刺身と野菜を大胆に高く持ち上げながら皆で混ぜます。このとき、「ローヘイ!ローヘイ!」と言い合います。そのすくって混ぜる動作を「撈」、広東語ではloh と読み、金儲けの意があるようで、商売繁盛を願う行為となっているようです。ちなみに、広東語では「魚」は「余」の字と同じ発音で、余はゆとりがある、利益があるといった意を喚起させ、おめでたい言葉だそうです。

 

旧正月の間にはやってはいけないこと
  1. 1. 掃除をしてはならない。幸運を逃してしまうからといわれている。
  2. 2. 買い物をしてはならない。お金が貯まるようにという意味。香港では、旧正月前に靴を買ってはいけないといわれている。これは靴(広東語でハーイ)とつらいときに発するため息(ハーイ)が似ているためだという。「ため息をつくと幸せが逃げる?」

 

改めまして「恭喜発財」。よい、旧正月をお過ごしください。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.092(2007年02月12日発行)」に掲載されたものです。

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