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社説「島伝い」

2007年3月19日

由緒正しい日本食とは?

現在、世界的に日本食がブームになっています。味や見かけだけでなく、日本食は健康に良いという現地の人の安全・健康志向に合致して日本食への関心が高まっています。

 
このような日本食ブームを背景に、日本食レストランの数も世界中で年々増加の一途を辿っています。日本食を名乗るレストランは、現在海外に2万店以上あり、全米でも9,000店以上、そしてここシンガポールでも300件以上あると言われています。中華レストランほどではありませんが、今や海外でも多くの国や地域で日本食を食べることが出来るのは、我々日本人にとっても嬉しい限りです。

 
しかし中には、そんな日本食人気に便乗して、安くて怪しげな店も急増しています。こういった状況を懸念した農林水産省が始めようとしている「海外日本食優良店調査・支援事業」が、いま議論を呼んでいます。この事業は海外で“本物”の日本食を出す日本食レストランを“認証”するというものです。確かに、思わず首を傾げたくなるような料理や、場合によっては文句のひとつも言いたくなるような味を提供する“日本食”レストランも少なくありませんが、はたして“認証”する必要があるのだろうかというのが正直なところです。

 
現在日本食とされているてんぷらやハンバーグ、カツ丼などが、元々は日本以外の国や地域の料理を上手く取り入れて生まれたものであるように、日本食そのものがすべて日本だけで作られたものではありません。海外において現地の食文化と混じりあって生まれる料理はむしろ楽しみでもあります。どのような料理が登場しても、食べる人の舌によっていずれ必ず自然淘汰されます。

 
また、日本食レストランが増えることは、はからずも日本の食文化の宣伝にもなります。自分の街の日本食レストランで食べてみたことが小さなきっかけとなって日本に興味を持ってもらえれば、さらにその人が日本で同じ料理を食べる機会があれば、その違いを感じることで日本への更なる興味や理解を深める契機になるのでは――と考えるのは期待しすぎでしょうか。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.094(2007年03月19日発行)」に掲載されたものです。

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