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社説「島伝い」

2008年1月14日

見切り力

どんなプロジェクトでも、計画通りに行かないことが必ず発生します。その予定外のことがうまくハマってプロジェクトの推進力となり、事業拡大につながる、というラッキーなことはむしろまれで、残念ながら進捗の遅延や追加費用の発生……とあまり喜ばしくない事態を引き起こすことの方が多いものです。

 
また、綿密に立てられた計画通りにプロジェクトが進んだにも関らず、外的要因によって期待通りの効果が出ないこともあります。でも、もう少し様子を見たら問題が改善されるかもしれない、とズルズルと続けていくうちに結局大赤字……。後になって、適切な時期に手を引くべきだった、などと言うのは簡単です。しかし、実際にその「適切な時期」、つまり引き際を判断するのは難しいものです。プロジェクトに関っている人や取引先との付き合いが長く、信頼関係が築かれているとなおさら、外的要因だけでは見切りをつけにくいでしょう。特に日本人は、和を尊び、情を大事にすると言われる民族。誰かに落ち度がある訳でもないのに終止符を打つことには、少なからず抵抗を覚えてしまいます。

 
しかし、プロジェクトが会社に大きな損害を与えてしまう前に、やはりどこかで潮時を見極めなければなりません。プロジェクトにとって、会社にとって必要なこと、不必要なことを見定める力がリーダーには求められます。
その力、つまり「見切り力」は結局普段の行動の中でも重要なスキルなのではないでしょうか。必要なもの、成長を助けるもの、幸せにしてくれるもの、あるいは時間やお金を無駄にしてしまうもの、気持ちを苛立たせるもの……身の回りの所持品から普段の行動、人間関係、恋愛まで、様々なものを一度よく見直してみましょう。その整理整頓ができれば、無駄なものや相手に時間やお金を浪費したり振り回されることも減って、その分より充実した時間を増やすことができます。その積み重ねが1年続けば、仕事でもプライベートでも、今年が去年よりもっといい1年になるのではないでしょうか。

 
「見切り力」をうまく使って、2008年を充実したいい年にしましょう。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.114(2008年01月14日発行)」に掲載されたものです。

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