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社説「島伝い」

2008年1月28日

新陳代謝を高めよう

2007年はシンガポールの就労ビザに関して大きな動きがありました。1月から実施されたパーソナライズド・エンプロイメント・パス、12月から実施されたワークホリデーパスは、いずれも雇用主との紐付けがなく、職種も一部の資格・認可を要するものを除いて制限がありません。シンガポールで働いてみたい、あるいは働き続けたい外国人にとっては一段と門戸が開かれました。優秀な人材にはシンガポールに定着して、国の発展に寄与してほしいと真剣に考えている政府の姿勢とその実行力には、見習うべき点が多々あると思います。

 
一時はオーストラリアや香港、カナダなどへのシンガポール人の移住が増え、人材流出と騒がれましたが、シンガポールを発展させることで、グローバルに勝負できる場を作ろうとしているのかもしれません。

 
人材の海外流出は、日本でもかなり以前から起きている現象ではないでしょうか。自分の力を存分に発揮できる場を求めた結果が海外で働くことだった、という方も多いようです。

 
外の世界を肌で知っているということは非常に大きな強みになります。これは海外駐在で経験を積んだ場合も同様でしょう。ところが、日本帰国後のアサインメントには、その点があまり考慮されていないように見受けられるケースがあります。本人のモチベーション低下に繋がるだけでなく、会社の貴重な財産を活用しないのは、もったいない話です。

 
最近では日系企業の現地化が進められ、日本人の現地採用も増えました。現地採用はその地で働き続けるものとされがちですが、将来的に本社や他国でのポジションに就くというキャリアパスが、選択肢としてもっとあっても良いように思います。

 
組織にとって人はいわば血液。人の流れがあり、新陳代謝が活発な組織は強いものです。逆に人の動きがあまりないと、硬直化して十分に能力を発揮できなくなる危険性があります。

 
グローバルなビジネス環境の中で生き残り、力を発揮していくためには、クリエイティブさや、状況の変化に臨機応変に対応できる柔軟さが求められます。日本という国も企業も、その力は既に持っていて、その使い方のヒントは実はここシンガポールにあるのかもしれません。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.115(2008年01月28日発行)」に掲載されたものです。

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