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社説「島伝い」

2008年8月4日

株式会社ニッポン

数多くの日系企業がグローバルに展開し、ビジネスというフィールドで他国の企業としのぎを削りながら闘っています。食品、自動車、電気製品など世界中にその名を知られたブランドも数多くあり、各地で実績を挙げています。自社の業績向上のために、日本とは異なる環境で必死に頑張る人達がいたからできたことで、もちろん、自社の業績貢献を考えて行動できるのは素晴らしいこと。でも、日本という国の発展のため、というのが強く見られたことはこれまであまり無かった気がします。

 
日本という国を株式会社に見立てれば、各企業は株式会社ニッポンの中の各部署ということになります。企業活動において、例えば製造部門だけがどんなに頑張っても、販売部門がうまく機能しなければ作ったものは思惑通りには売れず在庫の山ができてしまいます。あるいは、販売部門が頑張って製品をたくさん販売して来ても、経理部門がずさんな請求処理をすれば売掛金を回収できず、キャッシュフローが回らなくなって最悪の場合黒字倒産してしまいます。同じように、特定の企業が孤軍奮闘して世界中に名を馳せても、自社の利益だけを見ていたのでは、日本への貢献度も限定的なものになるでしょう。

 
一方、ある調査によると、最近日本の若者の間では「日本のために」を仕事選びの基準にする人が増えているそうです。否定的な意味ではなく、前向きな意味での健全な「愛国心」の萌芽であれば、日本にとっても良い傾向。強い株式会社ニッポンであるためにも、これから日本がどこに向かっていくのか、日本を率いる政府がビジョンをしっかり示すことが、彼らの頑張りや、海外経験を通じて日本を良くしたいと思う人々の努力を有機的に結び付けるには必要なのではないでしょうか。

 
ナショナルデーが近付き、赤を基調にしたバナーや大きな立て看板、そしてシンガポール国旗が街中に溢れているのを目にするこの時期になると、ナショナルデーパレードを通じて多民族からなるシンガポール人の愛国心を高めるべく、国のビジョンを明確に示すメッセージを発するシンガポール政府の姿勢に、そんな事を考えさせられます。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.127(2008年08月04日発行)」に掲載されたものです。

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