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社説「島伝い」

2010年3月1日

眠らなくなった街

今号5ページに掲載の「深夜、早朝の買い物が増加、生活スタイルが変化」という記事を見て、シンガポールの変化を改めて感じました。15年ほど前のシンガポールの生活スタイルは、今と比べると随分のんびりしたものでした。ビジネスの中心であるシティエリアでさえ雨が降れば雨宿りをして待つのは当たり前、手早く便利に買い物ができるコンビニエンスストアも、24時間営業の店舗もほとんどありませんでした。日本食レストランは当時から何件もありましたが、日本から空輸される食材は限定的で、スーパーの店頭には日本産米もありませんでした。1995年に開始されたNHKのテレビ国際放送は、当初北米・ヨーロッパ向けだったため、ビデオに録画された大河ドラマを日本からわざわざ送ってもらっていた人もいました。

 
近年、特にここ4~5年のシンガポールの生活環境の変化は在住者の多くが実感していることでしょうが、本当に大きく変わりました。街中を走る自動車は新しいモデルできれいなものばかり、雨が止むまでのんきに雨宿りをする人の姿はほとんど見られなくなりました。次から次に高層ビル、コンドミニアム、ショッピングセンターなどが建設され、街の景観も大きく変わりました。日本の商品が簡単に手に入り、民放のテレビ番組もリアルタイムに視聴できます。

 
経済的な繁栄に伴って、人々が夜遅くまで働くことや、夜更かしをして遊びに出かけることが当たり前のことになり、深夜営業や終日営業の店舗も増えて便利になってきています。これらのことはすべて連動していて、F1開催や2つのカジノ総合リゾート開発などにも牽引されて発展してきたシンガポールの国としての成長の証とも言えるでしょう。

 
ただ、このような成長過程においてはとかくスピードが求められ、ともすると自分のペースが乱されがちです。シンガポールでは今後ますます利便性が向上し、変化のスピードは早まる一方でしょう。変化の渦に巻き込まれて自分のペースを失うことのないよう、足元をしっかり見ながら対処するように心がける必要がありそうです。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.162(2010年03月01日発行)」に掲載されたものです。

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